ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

かわいいね

猫愛爆発!

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『ポーリーちゃんポーリーちゃん 』どいかや/文・絵、小学館

かわいいかわいいポーリーちゃんをひたすら愛でる。
それだけのキュートな絵本です。

もうね、猫愛爆発。

どいかやさんは、猫好きで知られる絵本作家さん。
たくさんの保護猫たちと自然豊かな素敵な暮らしをしています。
そんなどいかやさんの、愛猫への深い愛情が伝わってきます。
色鉛筆で描かれる繊細なタッチの絵本はとても可愛らしい。

猫バカの私には、自分の猫バカぶりを見せつけられたようでちょっと恥ずかしくなる、そんな猫愛にあふれた素敵な絵本です。

『夜廻り猫』を語る会

6月1日、ネコオドルで「『夜廻り猫』を語る会」を開催しました。

寄居読書会のスピンオフ企画。
『夜廻り猫』愛がとまらないメンバーで「ちょっとお酒でも飲みながら語ろうよ!」ということになり、開催することになりました。

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『夜廻り猫』は、深谷かほるさんのコミック。
講談社から現在5巻まで発売中です。
第21回手塚治虫文化賞短編賞を受賞しています。

生きづらい人にそっと寄り添う。
わかるわかると、肯定してくれる。
そんな優しいマンガです。

それぞれお気に入りの場面やキャラクターを話したり、あちこちに話が脱線したりしながら、楽しくあっという間の2時間でした。

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楽しかったなぁ。

夜になると

これからが猫の時間です。

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『よるのねこ』ダーロフ・イプカー/文と絵、光吉夏弥/訳、大日本図書

夜になると、ねこは散歩に出かけます。
暗闇でもよく見えるねこの目。
何が見えているのでしょうか。

人間には見えない夜の世界を、猫と一緒に体験できます。

昼間は寝てばかりのねこですが、夜にこんな冒険をしているのだとしたら納得ですね。
そっと寝かせてあげてください。

読み聞かせにぴったりの、色彩も楽しい猫絵本です。

鬼と井戸と

大好きな1冊。

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『鬼の橋』伊藤遊/作、太田大八/画、福音館書店

平安時代の京の都。
歴史上の人物、小野篁の少年時代をモチーフにした物語です。

少年篁は、ある日、妹が落ちた古井戸から冥界の入り口へと迷い込みます。
そこではすでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が、いまだあの世への橋を渡れないまま、鬼から都を護っていて…。

テレビで小野篁の特集番組を見た父から「小野篁の本がなにか読みたい」と言われ、これをすすめたらとても感激していました。大人でも十分楽しめる、子どもだけにではもったいない、そんな名作です。

小野篁を題材とした小説は多いですが、人物について書かれた本は意外と少ない。
昼間は朝廷で官吏を務め、夜になると冥府において閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという伝説があり、冥府との往還に使っていたのが井戸。
人々の創造力を刺激する、魅力と不思議にあふれた人です。

坂上田村麻呂も、悪路王などと絡めて私の興味を引きつけてやまない人物です。
この時代には興味と関心が尽きません。
やっぱり平安時代、好き!

第三回児童文学ファンタジー大賞を受賞した作品。
大人も子どもも読んでほしい、日本ファンタジーの傑作です。

ぼくだけの名前

君に呼んでほしい。

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『なまえのないねこ』竹下文子/文、町田尚子/絵、小峰書店

竹下文子さんは美しい文章とファンタジーのやさしい世界が大好きで、『風町通信』が特にお気に入りの作家さん。
町田尚子さんは『ネコヅメのよる』で虜になった、言わずと知れた(?)ネコオドル一押し作家さん。
おふたりとも、猫好きで知られる作家さんです。

大好きなお二人が作った猫の絵本、発売前から気になってしかたありませんでした。

商店街で暮らす、名前を持たない1匹の野良猫。
いろんなお店の飼い猫たちがみんな持っている「名前」に憧れています。
「自分で名前をつければいいじゃない」と言われて、探しはじめるけれど…。

タイトルでもう泣きそうになる。
そして読みながら泣きそうになって、読み終わって泣きそうになる。
というか、ずっと泣いている。
猫好きに捧げる温かく幸せなお話です。

表紙の猫の表情が、うちの「ぽんた」によく似ているんです。
ぽんたは、10年近く野良猫を続けてきた猫。
全然人になつかない猫でした。
家の中で暮らしてる今でもたまに、人間が急に立ち上がったりすると怖がって逃げ出すような子。野良猫時代に、なにか怖い思いをしたのかもしれません。
そんなぽんたは、よく、こんな上目づかいの顔で人間を見つめてきます。

わがままは言わないよ。
そばにいさせてね。
そんな言葉が聞こえてきそうで、愛おしくなります。

読み聞かせにも、大人が読むのにも、どちらにもおすすめ。
猫への愛を深める上質な絵本です。

姉妹と兄妹

隣の姉妹と、うちの兄妹。

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『となりの姉妹』長野まゆみ/著、講談社

まず、この本の装丁について語らせてください。
淡い色彩の装丁画は美しく、見返しもとても凝っています。
そして特記すべきは、紙。
薄い透かし模様のある紙が使われているんです。
綴じの糸にもこだわりが感じられて、本当に美しい。

読み終わっても手元に置いておきたくなる本は、こういう本だと思います。

さて、この本の内容へ。

些細な出来事がからみあって、いつのまにか不思議な世界へと迷い込んでしまう。
そんな妖しい雰囲気たっぷりの物語です。

おばさんが遺した、なぞのしりとり。
白蛇、蛇の石、鏡、暗渠、黄金のなる木。
隣に住む姉妹と、放浪の兄と、個性的な間借り人。

登場する人やモノゴトがどれもこれも妖しくて、民俗的なことが好きな私にはぴったりとハマるおもしろさでした。

長野まゆみさんの作品は、10代のころ大好きで高校の図書室にあった本は全部読んでました。少年が主人公のお話は多かったと思います。文庫を少しずつ集めて読んでいたけど、20代になってから少し遠ざかっていましたが、今回この『となりの姉妹』というタイトルに惹かれてまた手に取りました。

私は姉妹の妹なので、姉妹モノには惹かれてしまうんです。
と、思っていましたが、私は兄妹の妹でもあるんです。
3人兄妹の末っ子なんですよね。
ですから兄妹モノにも弱いのです。

この作品はまさに、姉妹モノであり兄妹モノでもあり、私にぴったりの物語でした。

妖しいばかりでなくユーモアもある。
好きだったのは、お話の中でおばあさんがたくさん登場する場面で、「これはどのおばあさんだっけ?」と少し混乱しそうになっていた時。次を読んだら、その気持ちそのままに「おばあさんがたくさん出てきてわかりにくい」と書いてあったんです。おお。読者の気持ちを代弁してくれる主人公って素敵。置いてきぼりにしない優しさというか、「だよねー」っていう共感というか。そういうのって好きなんですよね。

長野まゆみさんの作品、またさかのぼって読まなくては!と思わされた読書体験でした。

呪いをとくもの

うっとりとします。

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ノロウェイの黒牛』なかがわちひろ/文、さとうゆうすけ/絵、BL出版

身の毛もよだつ怪物とされるノロウェイの黒牛と結婚してもいいという娘。黒牛の背に乗り、果てしない旅に出た娘は、黒牛にかけられた呪いを知り…。
娘と呪われた黒牛の、ふしぎな恋の物語。
スコットランドの昔話です。

ファンタジー好きの私、この表紙を見ただけでビビッときます。
絶対好きなやつだ、これ。

子どもの頃好きだったお話に、アンデルセンの「白鳥の王子」があります。「野の白鳥」とも言うそうですが、魔法で白鳥に変えられてしまった11人の兄を救う王女の物語です。
王女は様々な困難に合い、危険にさらされながらも、たったひとつのことを信じて孤独に戦い抜く。
私が、強い女性の物語が好きな原点は、ここにあるのかも。
自らの信念に従い、強い心で未来を切り開いていく。
そんな芯の強い女性に憧れます。

この『ノロウェイの野牛』も、強い女性の物語です。
強い女性は、美しい。

美しい絵と文章で綴られた、美しい物語。
大人にも手に取ってほしい絵本です。