ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫5匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

ねこの恩返し

歌って踊る。

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『おけさねこ』ゆきのゆみこ/文、赤坂三好/絵、チャイルド本社

佐渡島の海辺に「にすけや」という魚屋さんがありました。
あるときからさっぱり繁盛しなくなってしまい、夜逃げすることに。
にすけさん夫婦は、16年かわいがってきた猫のあさにお別れを告げます。
その数日後、旅支度していたところに、美しい娘が訪ねてきて…。

この『おけさねこ』は、おけさ節のいわれを説く佐渡の伝説です。
経済的に苦しくなった飼い主を助けるために、猫が女性に化けたというお話。
猫が化けた女性は「おけさ」といって、唄や踊りが上手だそうです。

新潟にも踊る猫!
それに寄居の民話の踊る猫とおなじで、人間に幸運をもたらすのですね。

「日本のどうぶつ昔話」シリーズの1冊。
茶トラ猫が楽しそうに踊る表紙、とっても素敵です。

猫踊る絵本コレクションのひとつです。

みとりねこ

いつまでも一緒に。

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『みとりねこ』有川ひろ/著、講談社

猫と暮らすこと。
優しくてちょっと切ない7つの物語。

どうしたって猫より人間の方が長く生きる。

猫の成長の早さを、猫目線から見た人間の子どもの成長の遅さとして描写されると、おかしくてしょうがない。
猫から見たら、いつまでも赤ちゃんな人間って、危なっかしいんだろうな。

猫を看取ることは、とても悲しい。
絶対慣れることはない。

こんなに悲しいことはないけれど、でも、思うんです。

猫を残して死んでしまうことほど悲しいことはない、って。

最期の時に立ち会えること、看取ってあげられることは、猫と私のハッピーエンドだと思うようになりました。

残された猫の物語は、どうしても泣けてしまう。

これは、猫と人間の、幸せと優しさにあふれた物語。
心をじんわりあたためてくれる1冊です。

ヒロシマの港

なぜ広島に原爆が落とされたのか。

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『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』堀川惠子/著、講談社

広島の軍港・宇品に置かれた、陸軍船舶司令部。
3人の司令官の生きざまを軸に宇品の50年を描き出すノンフィクション。

暁部隊」の名前で親しまれていた陸軍船舶司令部。
兵隊を戦地へ運ぶだけでなく、補給と兵站を一手に担う、いわば「輸送の要」でした。

昭和16年に始まった太平洋戦争は、太平洋から南アジアまでを戦域とする「補給の戦争」となりました。
内地から遠く離れた孤島で戦う何万人もの兵士のために、補給はなくてはならない生命線。
しかし日本の参謀本部には、輸送や兵站を一段下に見る風潮がありました。

その象徴となったのが、ガダルカナルの戦い。
アメリカ軍は日本の輸送船に狙いを定めて的確に沈めにかかりました。
それにより日本軍は、兵器はおろか満足に糧秣さえ届けることができず、取り残された兵士は極端な餓えに苦しみ、多数の餓死者を出したのです。
「ガ島=餓島」と言われた所以です。

藤原彰『餓死(うえじに)した英霊たち』は、日本の兵士の死者のほとんどが戦死ではなく戦病死、それも餓死だったと訴える書です。
この本では、様々な戦場で補給が行われなかったことについて、ほぼ「制空権・制海権がないため」との一言ですませていますが、その背景には、決死の思いで輸送を試みた人々がいたことも、忘れてはならないのではないでしょうか。
これは、解説で一ノ瀬俊也さんも言及してるように、「兵站は軽視されたが、軽視と無視とは大いに違う」のであって、「海の向こうで行われた戦争を補給やモノの面から長期間支えた仕組みはどのように作られたのか」という点において、この本が書かれた2001年当時にはまだ研究が及んでいなかったことを示唆していると思います。
この点においてにも、陸軍船舶司令部に注目した『暁の宇品』は、とても貴重な資料になると思います。

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日本軍の兵站軽視について知識を深めるには『餓死した英霊たち』藤原彰/著、筑摩書房

先に『暁の宇品』を読んだからか、少々強引な論調に思える部分もありますし、馬に関する章などは、盲目の馬を守りながら行進した行李兵の体験記を読んだことがあったので、必ずしも藤原さんの述べる通りではないと感じています。
敗戦後に馬が一頭も帰国しなかったのも、連合軍に引き渡したからで、この書かれ方だと、すべてが犠牲になったと捉えられかねず。

一ノ瀬さんも言っているように、決して日本軍と戦争を擁護や弁護するつもりは毛頭ないですが、日本軍の責任を問うための材料としての事実ばかりに目を向けるのではなく、忘れてはいけない真実を、ひとつひとつきちんと拾い上げていかなくてはいけないと思います。

話を戻しますね。

日本はアメリカによって「兵糧攻め」にされていたという。
大本営の過ちは、輸送や兵站を軽視しただけでなく、そのアメリカの目論見にまったく目を向けなかったこと。
船舶の不足や補給の問題を訴える現場の声にも全く耳をかさなかった、その罪は大きい。

そして、1945年8月6日、広島に原爆が投下された日。
上からの指令を待たず、独断で真っ先に救援活動を行ったのは陸軍船舶司令部だったのです。

なぜヒロシマに原爆が落とされたのか。
これは堀川惠子さんがこの本を書くきっかけとなった疑問です。
この問いへの答えは、この本を読んで確認してほしい。

戦争が語られるとき、作戦を練った参謀本部や、戦線に出向いた兵隊たちにスポットが当てられることが多いですよね。
でも、戦争で戦ったのは、兵隊だけじゃない。
そのなかでも、従軍看護婦は体験記も多く、日本赤十字社も本を残していることから、よく知られています。
でも、輸送船を動かしていた船長や船員たちが民間人だったことは、ほとんど知られていないのではないでしょうか。
戦後、軍属として認められ恩給の対象になったと書かれていますが、当時、戦場への輸送を民間人に行わせていたという事実は覆すことはできません。

私がこの本を手にしたきっかけは、祖父の実家が広島市だったから。
兵役に召集された祖父が最初に配属されたのが野砲兵第五聯隊だったのですが、巻頭の地図にその場所が載っていました。
祖父はその後すぐ中国行きの部隊に転属になり、宇品から出港しました。
祖父の実家は、爆心地から1キロほどの場所にあり、原爆で跡形もなくなりました。
祖父は、中国で戦病死しました。

いま、作家だった祖父のことを調べているなかで、戦争のこと、広島のことも学び直しています。
知らなかったことが多すぎる。
今まで、悲惨な現実から目を背けたくて深くを知ろうとしなかった。
そんなかつての私に、戦争も広島も私のアイデンティティに大きく関わっているんだと、教えてあげたい。

ノンフィクション作家の堀川惠子さん、今回はじめて読みましたが、とても素晴らしかった。
戦争、広島に関する著作が多くあります。
過去作もさかのぼって読みたいと思います。

ひとり出版社

思いを届ける仕事。

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『ひとり出版社という働きかた』西山雅子/編、河出書房新社

港の人、赤々舎、ミシマ社、土曜社、タバブックス…
小出版社を立ち上げた彼らの個性豊かな発想とその道のり、奮闘をリアルに綴る。

新たにコロナ後の働きかた、出版記を加えた増補改訂版です。

2015年に出版された初版が買えなくなっていたのでずっと残念に思っていたのですが、内容が更に充実した増補改訂版が発売されたので本当に嬉しいです。

私の本棚からこの本を見つけて読んだ母が、「おじいちゃんもこんな感じだったのかな」とつぶやきました。

母の一言にハッとしました。

私の祖父は、友人と3人で出版社を立ち上げたのです。
1940年頃のことです。
ほとんど記録が残っていないのですが、戦時下の企業整備によって廃業になる1944年までに、学術書を中心に多くの本を出版していました。

そういう視点でこの本を読んでいなかったので、母の一言でこの本に対する感じ方が大きく変わった気がします。

今私は、作家であり出版社の代表もつとめた祖父の足跡を追う調査をしています。
そんな「今の私」に、祖父の内面を理解するために必要な本として、あらわれてくれたのでしょうか。

自分がひとり出版社をはじめることは今のところ考えていないけれど、祖父と近しい本と思ったら、より一層興味深い本になりました。

祖父に一歩近づけたでしょうか。

空飛ぶ猫

会いに行くよ。

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『空猫アラベラ』アティ・シーヘンベーク・ファン・フーケロム/作、野坂悦子/訳、本作り空Sola

アラベラは、8年も猫天国で暮らしている「空猫」。
あるときアラベラは飼い主のおばさんに会いたくなり、「宇宙カゴ」に乗っておばさんのもとへ向かいました。

おばさんにはアラベラの姿は見えません。
でも、猫たちには見えるのです。

「死んだ猫アラベラ」とおばさんの物語。
設定がもう切なすぎるのですが、近所の猫たちも巻き込んだ話の展開はとてもキュート。

原作の初版は1965年ということですが、ちっとも古びた感じはありません。

温かいタッチの絵と文字と色彩で、文庫本サイズの小さな絵本。
本棚に置いておきたくなるおしゃれな1冊です。

見えない敵

今、読むべきか、読まざるべきか。

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復活の日小松左京/著、KADOKAWA

生物化学兵器を積んだ小型機が、真冬のアルプス山中に墜落した。
感染後5時間でハツカネズミの98%を死滅させる新種の細菌は、摂氏5度で異常な増殖をみせ、春の雪解けと共に爆発的な勢いで世界各地を襲い始める。
人類はなすすべもなく滅亡する。
南極に1万人たらずの人々を残して。

1964年に発表された作品。
このコロナ禍で、カミュ『ペスト』と並んで再注目を集めていますね。

原因の究明も追いつかず、絶望的な早さで広がり続けるウイルス感染。
ただただ恐怖です。

映画にもなっているんですね。
この状況下で見たら絶望的な気分になりそうですが、テレビ放送したら、長く続くコロナ対策に飽いて緩みだしている人々にちょっとは刺激になるのではないですかね。

復活の日』には、設定を2009年に置き換えて新井リュウジさんがリライトしたジュニア向けもあり、こちらもあわせて読みました。

女性に関する部分が書き換えられ、全体的に描写が柔らかく易しくなっているので、小松左京復活の日』がとっつきにくく読めていないという人には、こちらをおすすめします。

私は原作→ジュニア版の順番で間髪明けずに読み、難解だった部分を大きく包んで要約してくれた感じでした。
昭和の男目線の部分がなくなっている分、ジュニアだけでなく女性にも読みやすく受入れやすいと思います。

強いメッセージ性を持った作品、読むなら今です。

黒猫は本が好き

おすすめ本あります。

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『くろねこのほんやさん』シンディ・ウーメ/文・絵、福本友美子/訳、小学館

本を読むことが何よりも好きな黒猫。
ある日、とある小さな子どもの本屋さんで働くことになりました。

黒猫の本屋さん!

「本屋さんと猫」の絵本や児童書はいろいろありますが、黒猫率が高い気がします。
うちの黒猫も、なるべくしてなった「本屋の猫」なのでしょうか。
おっとりとしていて優しい性格の黒猫は、本屋のお店番にぴったりです。

この絵本の黒猫は、子ども達にぴったりな本を選んであげるのがとても上手。
あっという間に人気者になります。

読書の楽しさを伝えてくれる、明るくてユーモラスな絵本です。