ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫5匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

おなかの虫

スイッチョと鳴く。

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『スイッチョねこ』大佛次郎/文、安泰/絵、フレーベル館

きれいな声で鳴く虫は、おいしいに違いない。
好奇心旺盛の白い子猫が、虫を飲み込んでしまいました。
すると、おなかの中から「スイッチョ」と鳴く声がきこえて、さあ大変です。

眠ろうとするとおなかのスイッチョが鳴くので眠れない。
人間で言うところの不眠症になってしまう白い子猫、かわいそうだけどちょっと面白い。

トラ猫のお医者さままで登場しての大騒動。
どのようにして解決するのか、その展開もとてもいいのです。

秋から冬にかけての、子猫と秋の虫たちを描いたかわいらしいお話。
素朴であたたかい絵が物語の世界によく合っています。

この絵本は秋のお話ですが、我が家の猫と虫との戦いは、春からはじまっています。

虫を食べちゃだめだよーと、この絵本を猫たちに読んで聞かせたい。

踊る踊る

猫もしゃくしも。

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『踊る猫』折口真喜子/著、光文社

画家で俳人与謝蕪村が見聞きした、不思議な9つの物語。

読書記録をつけているのですが、数年前にこの『踊る猫』を読んだことになっていて、でもどんな内容だったのか記憶がなく、本当に読んだのかピンとこなかったのです。
そこで改めて読むことにしました。

タイトルになっている「踊る猫」は短編のひとつ。
猫は踊るもの、という説は蕪村の時代から変わらないようです。

蕪村と応挙が戯れに描いた踊る猫としゃくしの絵、楽しげな雰囲気が伝わってきます。
検索すると見ることができますので、興味のある方はぜひ。

蕪村の句や絵を軸にして紡がれる幻想的な物語集。
河童、月の兎、雪女、ウブメ。
妖しげなものたちがたくさん登場します。

時にもの悲しく、優しく、妖しい物語たち。

本のタイトルが『踊る猫』じゃなかったら、もしかしたら手に取らなかったかもしれない本。

タイトルに導かれて出会うことができました。
読めてよかった。

続編に『恋する狐』があります。

ねこたち

熊さんの猫。

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『ねこたち 猪熊弦一郎猫画集』猪熊弦一郎/〔画〕、ilove.cat/企画・編集、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館/監修、ミモカ美術振興財団/監修、リトルモア

猫、猫、猫……頭の中まで猫が住み込んでしまった画家の、愛のデッサン。

画家・猪熊弦一郎の存在を恥ずかしながらつい最近まで知りませんでした。

「この絵、猪熊の猫絵を彷彿とさせるね」と、なにかの会話で、ぽんっと出てきた名前。

猪熊の猫絵。
熊さんなのに猫の絵か、と、ちょっと愉快に感じて検索したら、この猫画集を見つけました。
新刊は買えなかったので、古本で探して。

猫は猪熊弦一郎が好んで描いたモチーフのひとつだそうです。

いたずら書きのような猫から、彩色されアートになった猫まで。
なんと690匹もの猫たち!

猫への愛で埋め尽くされた猫画集、圧巻です。

森の魔女

カブを探して。

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『バーバ・ヤガー』アーネスト・スモール/ぶん、ブレア・レント/え、こだまともこ/やく、童話館出版

カブを探して森の奥深くまで入り込んだ女の子マルーシャが、おそろしい魔女バーバー・ヤガーにつかまって…。

ロシアの昔話です。

この絵本は、先日古本屋さんで見つけたもの。
背表紙の美しさと、表紙のインパクト、版画の絵の美しさに惹かれて手に取りました。
お話には猫も登場します。
表紙にもいるんですよ。

バーバー・ヤガーの民話は知らなかったので、今回はじめて読みました。
魔女に捕らえられた女の子が、知恵を使って助かるお話。

BL出版の世界のむかしばなしシリーズ絵本が美しくて大好きなのですが、その1つにこのお話が加わったら素敵かもと想像しました。
黒い騎士と白い騎士、バーバ・ヤガーの不気味な家、黒いヒマワリ、ハリネズミの少年。
幻想的で美しい絵本になる要素がたっぷりあります。
強くて聡明な女性が主人公という点もいい。
新しいバーバ・ヤガーの物語、見てみたいものです。

カブ探しにはじまるお話。
大変な目に遭い壮大な展開をしながらも、最後はカブをどっさり食べて終わる。
このずっこけ感も愛おしい。

読み応えある、ロシアの民話絵本です。

城の猫

白猫じゃないよ。

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『しろねこ 英国の古城に暮らす猫を訪ねて』石井理恵子/執筆・撮影、横山明美/執筆・撮影、新紀元社

英国の美しい古城や貴族の館で暮らす猫たちをめぐる旅。

美しい建物や風景、英国の文化に触れられる美しい写真たっぷりの1冊。

猫たちも絵になる美しさ。
どことなく気品あふれる凛とした佇まいです。

文化財のような家具に囲まれたお部屋のなかで自由気ままに暮らす猫たちの姿はなんだか誇らしげにも見えて、写真を眺めるだけでも楽しくずっと見ていられる本ですが、猫や英国についての情報も豊富で読みごたえがあり、満足度かなり高めです。

なにより、「しろねこ」ってタイトルなのに表紙に黒猫をもってくるあたり、とても洒落てる。

大好きな1冊です。

映画探偵

幻の映画はいずこ。

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『チョコレートガール探偵譚』吉田篤弘/著、平凡社

巨匠・成瀬巳喜男監督の映画「チョコレート・ガール」をひょんなことから追うことになった、作り話のような本当の話。

フィルムは残ってないだろうと、早い段階で映像を探すことは諦め、求めるはその原作。
調べるうちに、主演女優の失踪、懸賞小説の信憑性など、気になることが多く出てきて…。

戦前の映画について古本屋や図書館、文学館などを訪ね調べる様子は、まさに大人の調べる学習。
私の好きな要素がたっぷりです。
興味深くて面白くて、一気に読んでしまいました。

そして、ふと思いました。

私の祖父は作家だったのですが、映画化と舞台化された作品があったのです。
戦時中の話ですが、「チョコレート・ガール」より10年くらい後のこと。
もしかしたら、吉田さんのように探したらわかるのかも。

女性の名前で発表したのですがペンネームがわからず、ずっと謎だったのです。
作品名もうろ覚え、おおまかな内容しかわかりません。

難易度高めの調査、まさに探偵です。
これは司書としてのレファレンス能力を最大限発揮しなければなりません。

映画探偵、はじめます。

夏の音

なんのおと?

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『きこえるきこえるなつのおと』マーガレット・ワイズ・ブラウン/作、レナード・ワイズガード/絵、よしがみきょうた/訳、小峰書店

小犬のマフィンをのせた車は、牧場をめざして走ります。
夏の牧場はとてもにぎやか、いろんな音が聞こえてきます。
一体何の音なのかな?

ワイズ・ブラウンの「きこえるきこえる」シリーズ。
夏の音は、生命の気配が濃くにぎやかです。

何の音なのか想像しながらページをめくる楽しみ。
そして声に出して読みたくなる。

気がつくと、全身でこの絵本を楽しんでいるはず。