ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

通すべからずの戦い

いつか入れる日まで。

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『警備員さんと猫』にごたろ/著、KADOKAWA

絶対に入りたい猫vs必死に阻止する警備員さん。
ほっこりする攻防を、漫画と写真で楽しめる1冊。

Twitterで見ていた、尾道市立美術館の警備員さんと猫との攻防が本に。

こんな侵入者ならいつでも歓迎ですよ。
決して通しはしないけど。

猫愛がダダモレしてる警備員さんのお仕事ぶりに、見ているこちらもにんまりしてしまいます。

にごたろさんの漫画もとてもいい。

Twitterの動画だけでも十分満足してるよって人も、ぜひ一度読んでみてほしい1冊です。

大丈夫。

魔法のことば。

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『あら、そんなの!』高橋和枝/著、偕成社

人間のお誕生日パーティーに招待された、のらねこのプー。
うれしいけれど、はじめてのことで、どうしたらいいのかわかりません。
そこで、ともだちのたまみさんに相談したら、たまみさんは素敵な提案をしてくれました。

準備万端でパーティーの日をむかえますが、胸はドキドキ、お腹はしくしく。
楽しみだけど緊張して気持ちが落ち着かないプーの気持ちがよく伝わってきます。

「あら、そんなの!」と言って、素敵な提案をしてくれるたまみさん。

私も考えすぎて心配になる性質なので、そんな時に「あら、そんなの!」と軽く吹き飛ばしてくれる人がいると、すっと気持ちが楽になって本当にありがたいです。

私もたまみさんのように、小さな不安な気持ちを軽くしてあげられる存在になりたいなあ。

プーは、無事にお誕生日パーティーをお祝いできたのでしょうか。
優しさがあふれだす、とってもあたたかい絵本。

「あら、そんなの!」
魔法の言葉に勇気づけられる素敵な絵本です。

100%と言いたい

心の中では100%。

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『99.9%猫が好き!』竹内薫/文、古瀬恵一/写真、小学館

猫好き科学作家、初の猫溺愛エッセイ。

現在飼っている6匹の猫たちへの愛を語りつつ、初めての猫体験の話をしたり、猫の回転について物理学的に解説したり、物理学者ならではの切り口で猫愛を披露しています。

ところでこのタイトル、なぜ99.9%なのかと思ったら、竹内薫さんは『99.9%は仮説』の著者だったのですね。

100%と言いたいところをグッと我慢したのでしょうか。

本の中では「残り0.1%の話」として、犬との思い出を語っています。

犬も猫も愛する物理学者。
好感しかありません。

軽妙でユーモアあふれる語り口、とても面白く読みやすい。
愛らしい猫たちの写真も満載です。

猫好きには頷けることだらけの、猫愛あふれるエッセイ本です。

はちみつ色の幸せ

ビスク先輩からばびぶーまで。

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『ハニオ日記』石田ゆり子/著、扶桑社

女優の石田ゆり子さんがInstagramで綴ってきた、ハニオ日記。
2016年から現在までのゆり子さんと犬猫たちの暮らしの美しい記録集。

愛猫ハニオ目線のとってもユニークな投稿。
いつも楽しみに見ているゆり子さんのInstagramが本になりました。
それも一気に3冊!

私がInstagramを見るようになったのはいつからだったのか…
ハニオ骨折事件のことは知らなかったので「こんなことがあったのか!」と驚きながら読みました。
猫でも落ちる、落ち方が悪ければ骨折もするのですね。

おちゃめで天然なハニオのつぶやき。
思わずため息がでてしまうほど、美しい暮らしの風景。
満たされて暮らす犬猫たちの愛らしさ。
いろんな要素がふんだんにつまった、贅沢で味わい深い本です。

癒やし効果抜群なので、少しずつ大切にページをめくりたい。

人気で入手困難な青い箱も、どうにか手に入れたいものです。

幻の映画

フィルムを捜して。

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『映画探偵 失われた戦前日本映画を捜して』高槻真樹/著、河出書房新社

いつのまにか消えてなくなってしまった、戦前日本映画の名作たち。
それら失われた映画に心奪われ、フィルムを捜した映画探偵たちを追いかけたドキュメント。

戦前の日本映画でフィルムが残されているのが製作本数全体の10%だとは衝撃的です。

失われた原因はひとつではなく、負の要因が幾重にも重なった結果だということ。

とても脆く、はかないフィルム。

そんな貴重なフィルムを捜し出し、修復し、後世に伝えようと活動する人たちの奮闘ぶりが伝わってくるとても興味深い記録の数々に、ぐんぐん引き込まれてしまいました。

そして、映画の捜し方を学びました。

私の捜したい映画、この本を読む前は見つけることはできないと思い込んでいたけど、読み終えた今、可能性はゼロじゃないと、思うようになりました。

奥が深い映画の世界。

眠れるフィルムを捜し出す日を夢見て。
映画探偵は、映画救世主。
ロマン溢れる世界です。

おなかの虫

スイッチョと鳴く。

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『スイッチョねこ』大佛次郎/文、安泰/絵、フレーベル館

きれいな声で鳴く虫は、おいしいに違いない。
好奇心旺盛の白い子猫が、虫を飲み込んでしまいました。
すると、おなかの中から「スイッチョ」と鳴く声がきこえて、さあ大変です。

眠ろうとするとおなかのスイッチョが鳴くので眠れない。
人間で言うところの不眠症になってしまう白い子猫、かわいそうだけどちょっと面白い。

トラ猫のお医者さままで登場しての大騒動。
どのようにして解決するのか、その展開もとてもいいのです。

秋から冬にかけての、子猫と秋の虫たちを描いたかわいらしいお話。
素朴であたたかい絵が物語の世界によく合っています。

この絵本は秋のお話ですが、我が家の猫と虫との戦いは、春からはじまっています。

虫を食べちゃだめだよーと、この絵本を猫たちに読んで聞かせたい。

踊る踊る

猫もしゃくしも。

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『踊る猫』折口真喜子/著、光文社

画家で俳人与謝蕪村が見聞きした、不思議な9つの物語。

読書記録をつけているのですが、数年前にこの『踊る猫』を読んだことになっていて、でもどんな内容だったのか記憶がなく、本当に読んだのかピンとこなかったのです。
そこで改めて読むことにしました。

タイトルになっている「踊る猫」は短編のひとつ。
猫は踊るもの、という説は蕪村の時代から変わらないようです。

蕪村と応挙が戯れに描いた踊る猫としゃくしの絵、楽しげな雰囲気が伝わってきます。
検索すると見ることができますので、興味のある方はぜひ。

蕪村の句や絵を軸にして紡がれる幻想的な物語集。
河童、月の兎、雪女、ウブメ。
妖しげなものたちがたくさん登場します。

時にもの悲しく、優しく、妖しい物語たち。

本のタイトルが『踊る猫』じゃなかったら、もしかしたら手に取らなかったかもしれない本。

タイトルに導かれて出会うことができました。
読めてよかった。

続編に『恋する狐』があります。