お客さま
『黒ねこのおきゃくさま』ルース・エインズワース/作、山内ふじ江/絵、荒このみ/訳、福音館書店
冬の嵐の晩に、おじいさんの家に1匹の黒猫がやってきます。
びしょぬれで痩せ細った猫に、おじいさんはミルクもパンもすべてあげて、とっておきのお肉まであげてしまいます。さらには貴重な薪をすべて暖炉にくべて、猫をあたためてあげます。そして翌日、おじいさんに起こった奇跡とは-。
ラストはちょっと謎が残る感じで、いろんな想像ができます。
与えることで自分も満たされる。
人情深いおじいさんの行いは、読んでいてあたたかい気持ちになります。
私は自分が満たされることばかり考えてしまっていないだろうか、と、省みるきっかけになりました。
この絵本は、なぜか新古書店で見かけることが多くて、それが少し残念です。
美しい絵のとても素敵な絵本なので、長く手元に置いて、時々読み返してほしい。
寒い冬の夜、あたたかい部屋の中で子どもに読んであげてほしい。
そんな絵本です。
スイッチオン!
クリスマスの夜の電気屋さん。
クリスマスの夜、とらねこ一家はツリーの飾りつけをしています。
すると突然雷が落ちて、まちが大停電に。
電気屋さんのとらねことうさん、出動します!
イルミネーションが輝く季節、電気の明かりのありがたみを感じます。電気屋さんがいなければ、クリスマスツリーも味気なくなっちゃいますよね。
クリスマスの輝きを取り戻すために活躍する電気屋さんが頼もしくて、「父さんかっこいい!」となります。
この絵本は、電気の明かりの部分に穴があいているしかけ絵本になっています。
信号、車のライト、窓のあかり、ツリーのライト。
電気がつくときのわくわくが楽しい。
「スイッチオン!」と声に出して言いたくなる、猫のクリスマス絵本です。
読書会@ネコオドル
12月16日、ネコオドルで読書会を開催しました。
寄居読書会の第6回目です。
課題本はゴーゴリ『外套』
参加者は7名。
恥ずかしながらゴーゴリは初めて読みました。
岩波文庫の『外套・鼻』平井肇/訳を読んだのですが、まぁおもしろい!
期待いっぱいで読書会に臨みました。
参加者には、やはりはじめて読んだという人が多く、その面白さに訳者の良さを感じたという、私と同じ感想を持つ人もいました。
かわいそうなお話なのですが、ユーモアのあるゴーゴリの表現、そして訳者の言葉選びの絶妙さ。
会の後半でゴーゴリの生涯を年譜を見ながら確認したときに、その理由がわかったような気がしました。
役者志望の青年だったこと、喜劇が書きたくてうずうずしていたこと。
演劇を知る人ならば、納得できるはず。
悲惨な場面でも面白くみせられるのが、喜劇。
登場人物が大変な目にあえばあうほど笑いが起こる、それが喜劇です。
ゴーゴリの『外套』には、喜劇の要素が詰まっているように感じました。
読書会のレポというより、私の感想になってしまいましたが…
この読書会がなければ、もしかしたら手に取ることもなかったかもしれないゴーゴリ。この『外套』そして『鼻』も本当にとても面白かったので、他の作品も読みたくなりました。作品に出会う素敵なきっかけを与えてくれる読書会に感謝です。
ねこおどる!
土曜日の夜にはじまるダンスパーティ。
『なんびきのねこたちおどる?』キャロライン・スタットソン/文、ジョン・クラッセン/絵、いわじょうよしひと/訳、犀の工房
土曜日の夜、路地裏に集まる猫たち。
2匹、4匹、6匹と増えていって、ダンスパーティがはじまります。
クラッセンのデビュー作です。
クラッセンと言えば、長谷川義史さんの関西弁の名訳でおなじみのちょっとシュールな絵本が有名ですが、これは絵のみを手がけた作品ですので、クラッセン特有のシュールさは期待しないでくださいね。
猫が踊るだけの、かわいらしい絵本です。
ネコオドルという本屋さんをはじめてすぐの頃、この絵本が出版されました。
出版社は「犀の工房」さん。
新しい出版社で、なんとこの絵本が第1作目。
同時期に生まれた出版社と本屋が「ねこがおどる」というキーワードで繋がるなんて、運命を感じました。
ネコオドルにも置かせてもらっています。
運命の1冊。
ぜひネコオドルで、ねこおどる絵本を手に取ってください。
男子の頭ン中
短歌は自由だ。
『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』木下龍也/著、岡野大嗣/著、ナナロク社
木下龍也さんと岡野大嗣さんが、ふたりの男子高校生のとある7日間を短歌で描いた物語。
短歌というと、尻込みする人もいるかもしれません。
馴染みがない。
むずかしそう。
俳句となにが違うの?などなど…
でも短歌って、すごく自由で、現代的な表現なんです。
「短い言葉で、想いを表す」
SNSに親しむ若者には、むしろ向いているのではないでしょうか。
ずっと昔、本屋さんでアルバイトをしていた時、バイト仲間に短歌を詠む人がいました。歌会に所属して自費出版で本も出すほどの本格派で、私は彼女の作品を詠むことで短歌の自由さ、面白さを知ることができました。
この本に出会って、彼女のことを思い出しました。
この作品は、設定も秀逸ですよね。
男子高校生ふたりの7日間を、短歌で。
興味をそそります。
タイトルや装丁も素敵なので、プレゼントにもおすすめです。
短歌にはじめて触れる人にも楽しめる1冊になっていると思います。