ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

かけはし

優しいほほえみ、優しいまなざし。

f:id:nekoodoruneko:20181028150756j:plain
『橋をかける 子供時代の読書の思い出』美智子/著、すえもりブックス


美智子さまの子どもと読書についての講演を1冊の本にしたもの。
本で知った美しさ、本から感じた不安、本から得た喜びなどについて語られています。

子ども時代の読書の大切さをじんわりと感じることができて、「本を届ける」仕事をしている私にとってかけがえのない1冊になっています。

本を届ける仕事をしている人必読の書。

ターシャのクリスマス

ターシャみたいなおばあさんになりたい。

f:id:nekoodoruneko:20181124152811j:plain
『クリスマスのまえのばん』ターシャ・テューダー/絵、クレメント・ムア/詩、中村妙子/訳 、偕成社

ターシャが描いた、クリスマス絵本。
ただただ美しいです。
大人にこそおすすめしたくなる1冊です。

ターシャの庭や、自然や季節を大事にする暮らしが、あこがれです。
同じようにできるかと言われたら、きっと難しいのでしょうが、でも、オールドクロスのワンピースを身にまとって、コーギーを連れてお庭の草花の手入れをするおばあさんに、あこがれない人なんているのでしょうか!

ターシャの家のクリスマスの様子を映像で見たことがあります。絵本にもなっていますが、クリスマスが近づいてくるのを楽しみに1日1日を過ごす丁寧な暮らしには、現代の生活でなくしてしまった豊かさを感じます。

華やかなイルミネーションに彩られた都会の街もいいですが、自然を敬い感謝しながら迎えるクリスマス、素敵だと思いませんか。

本当にサンタクロースが来てくれそうな、ターシャのクリスマス絵本です。

魔法のけいと

やっぱり冬には絵本が似合いますね。

f:id:nekoodoruneko:20181207151120j:plain
アナベルとふしぎなけいと』マック・バーネット/文、ジョン・クラッセン/絵、なかがわちひろ/訳、あすなろ書房

編んでも編んでもなくならない、ふしぎな毛糸。
町中のみんなの服を編んでも、毛糸はなくなりません。
アナベルの編み物で、町中がカラフルな毛糸の色に染まっていきます。
その不思議な毛糸をほしがる王子様が現れて…。

毛糸のぬくもりが恋しくなるこの季節にぴったり。
どこまでもぶれずに編み物を続ける女の子が、すがすがしい気持ちにさせてくれます。

ラッセンの絵とは気づかずに手にした絵本でした。
つまり、私はクラッセンが好きなんだな、と気づかされたということ。
可愛らしい絵と、芯が強い女の子の、素敵な絵本です。

大人のための猫寓話

ひと味違う、猫の物語。

f:id:nekoodoruneko:20181207151025j:plain
『猫のエルは』町田康/文、ヒグチユウコ/絵、講談社

さすが町田康、という感想。
猫が出てくる5つの寓話短編集なのですが、一筋縄ではいかないのです。
ヒグチユウコさんの挿絵が独特の世界観を増幅させています。

そんな中でも、表題になっている「猫のエルは」というお話は、涙を誘う、短い詩のような作品。こういうのも入っているから、ずるいなぁって思います。やられますよ。猫好きは。

かわいいだけの猫には興味がないという人に、ぜひすすめたい。
気高くて気まぐれな猫の魅力を、町田節で。

猫好きな方へのプレゼントにも喜ばれそうな、美しい装丁の本ですが、なんせエッジがきいてますから、上級者向けかも?
私なら迷わずプレゼントに選ぶ、特別な1冊です。

ゆきだるま

日本の初版では『ゆきだるま』というタイトルでした。

f:id:nekoodoruneko:20181207151237j:plain
『スノーマン』レイモンド・ブリッグズ /作・絵、評論社

子どもの頃アニメーションの「スノーマン」が好きで、絵本があるのを知ったのはだいぶあとでした。

アニメも絵本も、言葉のない世界。
コマ割りで描かれた世界。
それなのに、とても豊かなのです。

男の子と雪だるまの、せつなくて優しい物語。

アニメーションの音楽がとても印象的で、大好きでした。
見たのは本当に昔のことですが、今でも鮮明に覚えています。
絵本を眺めながら、頭の中ではあの美しい音楽が繰り返し流れています。

雪の季節にぴったりの、美しい絵本です。

本をすすめるということ

タイトルにビビってはいけません。

f:id:nekoodoruneko:20181207151159j:plain
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子/著、 河出書房新社

長いタイトルですが、その出だしの言葉でつまずかずに、最後まで読んでください。これは、本をすすめるお話です。出会い系のお話ではありません。

本をすすめることについては、私も仕事柄、考えることがあります。
図書館に勤めているというと、「おすすめ教えてよ」と簡単に言われたりしますが、本をすすめることってそんなに簡単なことではないですよね。自分の好みの本でよければ相手を問わずいくらでも紹介できますが、それでは本当の意味ですすめたことにはならないと思うのです。

相手の好み、今求めているものなど、本を選んでいくために必要な情報を収集して、頭の中のデータベースと照合して、目の前の棚から本を選び出す。

この本には、本をすすめるということに真摯に向き合う主人公の姿が描かれています。特に、かつての上司に30冊の本をプレゼンする場面に、ぐっときました。

今私が開いている本屋にあるのはすべてが私が選んだ本なので、どれもおすすめ本です。
その中から、あなたに合った1冊を選び出す。
簡単に「おすすめ教えてよ」と言ってくる人には、ぜひこの本をおすすめしたいと、意地悪な私は思うのでした。

著者の花田さんの実体験を元にして書かれた小説。
花田さんに、私に合う本をおすすめしてほしくなりました。

本が好きな方にはぜひ読んでほしい1冊です。

文学フリマ

11月25日、文学フリマに行ってきました。

読書会で知り合った方が出店するということで、初めての文学フリマ体験。これまで創作にはあまり縁がなかったので、ドキドキしながら。

場所は東京、流通センター。

f:id:nekoodoruneko:20181206133910j:plain

思っていたよりも大きな会場で、1、2階を埋め尽くすブースの数にまず驚きました。
創作してる人って、こんなにいるんですね。
それに、訪れる人の数もすごい!
熱気が満ち溢れていました。

まず心奪われたのは、作家のほしおさなえさんがいらっしゃったこと。著作『活版印刷日月堂』にちなんで、活版印刷で作った作品の数々が並んでいました。
f:id:nekoodoruneko:20181206134905j:plain

f:id:nekoodoruneko:20181206135059j:plain
作中に登場する活版印刷の栞や、活版印刷で作ったスピンオフ作品などを購入。

ほしおさなえさんと少しおしゃべりできました!

そのほかに素敵だったのが、フランス文学の翻訳をカードにした作品を作られていた方。

f:id:nekoodoruneko:20181206213809j:plain
フランス詩の翻訳が、カードをスライドすると現れます。
私は大学でフランス文学をかじっていたので、懐かしい作品に出会えて嬉しくなりました。

こちらも文字は活版印刷ではないかと思います。
とても美しい。

文学フリマの全体的な印象は、「本屋さんに並んでいそうな印刷クオリティ!」ということ。本当に、普通に文庫本の装丁だったり、紙の質感だったり。

個人的には、手作り感があったり、活版印刷や手製本の作品の方が、惹かれるものがあるなぁと思いました。和綴じの本を作っていた方がいて、そういうのは思わず話しかけてしまいますよね。

知り合いは、短歌集を、自分で製本してました。
美しくて素敵な装丁。

文学フリマ初心者でしたが、とても楽しめました。
また行きたい、次はこんな風に回りたい、と、すでに次回に気持ちが向かっています!

f:id:nekoodoruneko:20181206214909j:plain
戦利品。楽しかった!