ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

海に送る手紙

私は海のない街で生まれ育ちました。

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『ガラスの封筒と海と』アレックス・シアラー/著、金原瑞人/訳、西本かおる/訳 、求龍堂

ヤングアダルト小説の名手、アレックス・シアラーの作品。
船乗りの父を海で失った少年が、瓶に手紙を入れて海に流す。
海から返事が届いたことによって物語が大きく動き出す、ヒューマン・ファンタジー

シアラーらしい、ワクワクさせる楽しさと優しさに触れられる作品。
少年が見せる孤独感、父を失った悲しさが、じわじわっと伝わってきて切なくもなります。
少年の繊細な部分が、言葉にせずとも伝わってくる、奥深さも感じました。

シアラー作品は、図書館に勤めだしてからはじめて出会いました。
YA世代のためにたくさんの素敵な作品を生み出しています。
私の子ども時代にもあったらよかったなぁと、ついつい考えてしまいます。

美しい言葉たち

美しいものが好きです。

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『すみれの花の砂糖づけ 江國香織詩集』江國香織/詩、理論社

江國香織さんの作品は大学生の頃ずっと読んでいました。
選ぶ言葉の美しさ、文章の潔さが好きで、私の中で「本を読む」とは、「美しい言葉に出会うこと」でもありました。
内容は面白くても文章が無骨な小説などは、違和感があってあまり読んでいなかった頃です。

これは、そんな私には嬉しい1冊。
江國香織さんの美しく潔い言葉たちが、ぎゅっとつまった詩集です。
タイトルからして美しいですよね。
甘酸っぱくて、ちょっと苦い。
本のたたずまいも素敵です。

美しいモノに触れたくなったとき、そっと開きたくなる本です。

それでも終わりは来る

エンデといえばこれです。

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はてしない物語ミヒャエル・エンデ/作、岩波書店

高校生の夏休みに、部屋にこもって読みふけっていました。

映画「ネバー・エンディング・ストーリー」が大好きで何度も繰り返し観ていて、ファルコンに乗りたいと本気で思っていました。
私のもふもふ好きの原点はここにあるかもしません。
「もふもふ」と聞くと、今でもたまにファルコンを思い浮かべます。

この本は「その原作だよ」と兄から教えてもらって読みました。
映画の内容は、小説だと全然途中までのお話で、その後のお話があることに興奮して読んだのを覚えています。
本当に果てしなくて、読み終わったときの充実感が忘れられません。
そして、とても面白かったけど読み返すのにはちょっと勇気が必要だ、と思ったのも忘れられません(笑)

エンジ色の布張りの装丁が素敵な、エンデの名作です。

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少年の孤独な戦い

残念ながら映画は観ていません。

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『青の炎』貴志祐介/著、KADOKAWA

高校生の主人公は、母と妹との平穏な暮らしを脅かそうとする母の元夫を殺害しようと決意する。
17歳の少年の完全犯罪は成功するのか。

「ラストが…ラストが…」と、読後感を共有したがっていた人から薦められて読んだ1冊。
ミステリーは自分で選んで読むことが少ないのですが、これは読んで良かったです。
そしてやはり、ラストに衝撃を受けました。
ラストだけでなく、物語の展開そのものが、破滅に向かっていて切ない。
孤独でかなしい物語です。

心理描写が見事です。
読んでいて苦しくなってしまうほど、のめりこみました。
まだ読んだことのない方はぜひ手に取ってみてください。

物語のヒロインたち

氷室冴子さんの作品のなかでもお気に入り。

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『シンデレラ迷宮』氷室冴子/著、集英社

ある朝目覚めると、別世界にいた女の子。
そこで出会う物語のヒロインたち。
思春期の少女たちの心に寄り添った、名作です。

小学生の頃、氷室冴子さんの作品は全部持っていました。
ピンクのコバルト文庫
今もお気に入りは大事に持っています。

特に好きだったのがこの作品なのですが、一緒に氷室さんの作品を読んでいた友人から「これはあまり好きじゃない」と言われて、「私は好きだ」とは言い出せなくなってしまったことを、よく覚えています。
その友人は強くて自分の考えをはっきりと言える子で、私は引っ込み思案で思っていることを表に出せない子で。そんな性格の違いもあって、作品から感じた印象がそれぞれだったのだろうと今ならわかるのですが、当時は友人の感想がただ哀しかったのを覚えています。

多感な時期の少女たちの心の動きを繊細に描いた、YA小説の名作だと思います。
今のYA世代にも読んでほしい、色あせない作品だと思うので、絶版になっているのがもったいない。
図書館などでぜひ手に取ってほしいです。
復刊されるのを期待します。

シンプル

単純だけど難しい、それがシンプル。

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『シンプルに生きる』ドミニック・ローホー/著、幻冬舎

先日、「シンプルライフ」という映画を観ました。
アメリカで広がりをみせる「タイニィハウス・プロジェクト」を追ったロードムービーで、「身の丈に合った暮らし」をテーマにした映画です。

必要なものだけを残して、あとは削ぎ落としていく。
とても単純なこと。
でも、簡単そうに見えて難しいことです。

シンプルに生きるには、強い意志が必要だと思います。
その先には穏やかな心があるのだと思うと、とても羨ましい。

まずは自分の心に素直になると、目の前のことが少しシンプルに見えてくるかもしれませんね。

読書会@ネコオドル

10月21日、ネコオドルで読書会を開催しました。
寄居読書会の第4回目です。

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課題本はサン=テグジュペリ星の王子さま
参加者は6名。

毎回、主催をしてくださっている佐藤さんが趣向をこらした演出をしてくださいます。
今回はフランスの作品ということで、フランスのお菓子と紅茶でおもてなししてくださいました。
私も佐藤さんのような気の利いたことのできる女性になりたい。
いつもキュンとします。

読書会のはじめは自己紹介。
サン=テグジュペリからヒントを得て、「度々思い出す子どもの頃の情景」「命の危機を感じたこと」をそれぞれ披露。

今回初参加の方に、私と子ども時代の読書体験が同じ方がいて、とても嬉しい出会いでした!
同じ作家さんが好きで、しかも好きな作品も同じ!
はじめて出会いました。仲良くなりたい。

さて『星の王子さま』。
作品に入る前に、まずはサン=テグジュペリの年譜を確認します。
裕福な生まれだったこと、少年の頃から飛行機にただならぬ興味を持っていたこと、飛行士になるための情熱が半端なかったこと、事故にあったり墜落したり何度も瀕死体験をしながらも飛行士であることにこだわり続けたことなど、知っているようで知らないことがたくさんありました。
『人間の大地』や『戦う操縦士』など、サン=テグジュペリは文章が哲学的で難しい作品ですが、読んでみたいと思いました。

星の王子さま』の感想は、それぞれに気になった部分や感じ方が違うのが面白かったです。
「子どもの頃に読んだときはよくわからなかった」という意見が多かったのも印象的でした。改めて読み返してみたら、こんな物語だったかと、結末に切なくなったり。
「これは王子さまとバラの恋愛の話だ」という感想も。

恋愛、友情、それぞれの星の住人に象徴される大人など、メッセージ性が強い作品で、物語は子ども向けにわかりやすく書かれていますが、内容は大人向きだと、私は思いました。
子ども目線でズバズバと本質を突く星の王子さま、けっこう辛辣ですよね。

子どもの頃、「子どもの気持ちがわからない大人にはなりたくない」と思っていたことを思い出しました。
いま、年齢は立派な大人ですが、中身はちゃんと大人になっているのでしょうか。子どもの延長に今の自分がいる感覚で、全然立派な大人ではないのですが、今の子どもたちから見たら私も「子どもの気持ちがわからない大人」になってしまっているのかもしれませんね。

子どもの心、どこに置いてきてしまうのでしょうね。

新しい出会いもあり、楽しい読書会でした。

次回は来月、萩原朔太郎の『猫町』が課題本です。
ネコオドルで猫の本の読書会、楽しみです!