読書会@ネコオドル
2月17日、ネコオドルで読書会を開催しました。
寄居読書会の第8回目です。
まずは自己紹介から。
今回初めての方が2名いらっしゃいました。
「本を読むときの場所」や、課題本にちなんで「学校について思うこと」など。
優等生だった、友達と会う場所だった、という人もいれば、学校には窮屈な思い出があるという人も。『車輪の下』の主人公ハンスへと自然と気持ちが向かいます。
『車輪の下』は、14歳の少年ハンスの物語。
結末を言ってしまうと最後ハンスは亡くなってしまうので、「ハンスの生涯の物語」と表現をする人も。
大人達の期待を背負って勉学に励み、希望に胸を膨らませながら入学した神学校。そこでの生活、友人との出会いによって芽生える反抗の心、挫折、機械工としての再出発、エンマへの恋心…。
大人達から過度な期待をされて育ったハンス。
作品の中でハンスはずっと頭痛を訴えていて、かわいそうでなりませんでした。
ハンスはなぜ死んだのか。
ハンスはなぜ死ななければならなかったのか。
この問いに対する明確な答えはわかりません。
でも、ヘッセの生涯をみんなで確認しながら『車輪の下』を読み返したら、なんとなくですが「ハンスは死ぬべくして死んだのだ」という道筋が見えてきました。生きていては完結しない世界というのもあるのですね。
私はハッピーエンドが好きなので、どうしても「違う人生があったのではないか」と考えてしまうのですが、例えば「機械工になるか書記になるか」という選択肢が与えられたときに書記を選んでいたら、もしかしたら死なずにすんだ生き方ができたかもしれない、と思いました。
若き少年の短い生涯。
かわいそうな物語。
みんな、自分の子ども時代やお子さんのことを思い浮かべたり投影させたりして、時には憤ったりイライラしながら読んでいたのが印象的でした。
ドイツの代表的名作。
この機会に読むことができてよかったです。
『車輪の下』はいろんな出版社からいろんな訳者で出ているので、どの本を選ぶかも最初の楽しみです。
今回も、新潮文庫や光文社古典文庫、岩波文庫、講談社文庫など、いろいろなバージョンが集まりました。
一番多かったのは、高橋健二訳の新潮文庫版。
私も新潮文庫でした。
猫コレクション
猫を集める。
『名画のなかの猫』アンガス・ハイランド/著、キャロライン・ロバーツ/著、喜多直子/訳、エクスナレッジ
私にはコレクター気質が欠けている、と思いながら長いこと生きてきたのですが、最近はちょっと変わってきました。
絵本を買うようになったのがきっかけかもしれません。
好きな絵本、絵本作家さん、知れば知るほど好きになる。
そしてグッズもほしくなる。
それらは主に、猫です。
身近に、浮世絵収集家の方がいます。
その方が浮世絵を収集するようになったきっかけは、浮世絵に描かれている「植物」だったそう。
それを聞いたあと、猫が描かれた浮世絵を見た時に「ああ、これか」と思いました。
確かに、私なら猫が描かれた浮世絵、ほしくなっちゃうかも。
この本には、西洋絵画だけでなく、日本の浮世絵も登場します。
本物の絵画は集められなくても、これなら1冊の本で猫の絵を堪能できます。
猫を探しに美術館めぐりも楽しそうです。
本棚作りワークショップ
2月16日、本棚作りワークショップに参加してきました。
場所はときがわ町。
余った床板を使って、プロの建具屋さんご指導の下、参加者7名とその子ども達みんなで、わいわいと賑やかに本棚を作りました。
まずは採寸して木材を裁断します。
ここでプロの道具が登場。
女性でも簡単に木材をカットできる素晴らしい電動工具です。
そしてやすりかけ。
これも電動のやすり。
あっという間に表面がつるつるに!
そして、組み立てます。
電動のインパクトという工具を使ってネジを打っていくのですが、みなさん簡単そうに使っていましたが、私はなかなかコツをつかめず、グイン、グインと、先がはずれてばかりでした…。
組み立ててみると、ちょっと板が長すぎてはまらなかったり。
それもプロの建具屋さんが手際よく修正してくださり、最後に背板を釘で打ちつけて、無事に完成しました。
完成した本棚は、さっそく定位置に立てられました。
これからたくさんの本が並べられることでしょう。
プロの方の指導のもとみなさんと一緒に作ったので、とても楽しかったです!自分のほしいサイズの本棚を自分で作れるって、とても素敵ですよね。
私も自分の本棚、作りたくなりました。
ネコオドルが次のステップに進むときには本棚を作りたいなあと、夢が膨らむ楽しいひとときでした。
ご縁とフクロウ
ネコオドルがきっかけで、素敵な出逢いがたくさんあります。
『二人が睦まじくいるためには』吉野弘/詩、童話屋
先日、「本」「図書館」「猫」など、共通のキーワードで意気投合した方に教えていただいて、「行きたい!」という私を連れて行ってくださったのが、本庄市にあるchouette(シュエット)という雑貨とトマトカレーのお店です。
このお店、なんと詩人の吉野弘さんの長女、奈々子さんが店主さんなんです。
あの吉野弘さんですよ!
あの「奈々子へ」の奈々子さんですよ!
お店には、フクロウ好きの奈々子さんが集めたフクロウの雑貨を中心に、ハンドメイド雑貨や猫の雑貨もありました。
とても可愛らしくて、素敵な空間です。
そしてお店の奥のお部屋には「吉野弘の展示コーナー」が!
吉野弘さん直筆の詩や出版された詩集、手書きの名刺などが惜しげもなく並べられていて、ずーっと眺めていたくなる、贅沢な場所でした。
そしてトマトカレー!
水を使わずにトマトの水分だけで作るそうです。
トマトとスパイスが香る、本当に美味しいカレーでした~。
通いたくなります。
素敵なご縁でつながった、本当に楽しいひとときでした。
本や猫のお話も尽きることなく。
ネコオドルをやっていてよかったなあと、いろいろなめぐり合わせに感謝です。
詩集『二人が睦まじくいるためには』は、私が一番好きな吉野弘さんの詩集。「祝婚歌」という詩の、最初の一節がタイトルになっています。
この詩集にも、数年前に図書館でレファレンスを受けなければ出会っていなかったかもしれない。
ご縁にめぐり合わせ…福を運ぶフクロウに囲まれた素敵なお店で、幸せを感じたひとときでした。
雪のように白い猫
甘くてせつない猫の片思い。
子猫の時にごみ袋に捨てられていたところを助けてくれた理々子。
だからぼくは理々子が何より大切なんだ。
理々子がピンチの時に、人間の姿に変身できる力を手に入れた白猫タマオ。でもそれは夜だけで、寿命も縮む。でも、大好きな理々子のために…。
白猫タマオの、人間の女性への片思い。
猫の目線で書かれているので、一生懸命なんだけどどこか抜けていて、ほっこりします。
猫だけが知っている夏目漱石の秘密のくだりとか、面白すぎます。
好きな1節があります。
落ち込んでいる理々子を見つめるタマオの気持ち。
“理々子は黙って流れる景色を眺めていた。白い頬に白い産毛が光っていた。その産毛がもっと濃くなってもっと長くなってぼくと同じ白い猫になってしまえばいい。ぼくはそのとき本気でそう願った。”
飼い猫にこんな風に想われたら、嬉しいな。
そう思いながらうちの黒猫を見て、ふと思いました。
黒猫にこんな風に想われたら、なんかイヤかも…。
そんなに産毛濃くないし…。
白猫だから美しい、愛しい描写です。
猫目線の小説のなかでも読みやすくて面白い、そしてせつない恋の物語です。
ぼくの場所をとりもどす!
ペンギンも大好きなのです。
『ぼくのばしょなのに』刀根里衣/著、NHK出版
パパとママのおなかの下がお気に入りのククー。
でもある日、自分だけのものと思っていたその大好きな場所が、たまごにとられてしまいます。
お気に入りの場所を取り戻すために、ククーはあることを思いつき…。
ふてくされたククーの様子が愛おしいし、自分だけのものと思っていた大好きな場所をとられてしまうことで両親の愛情も失ってしまったのではないかと不安になる気持ちも伝わってきて、「そんなことないんだよ」って抱きしめてあげたくなる切なさも感じます。
刀根里衣さんの、あたたかくて美しい絵本が大好きです。
優しさがいっぱいつまっています。
兄や姉になる前の子どもの気持ちを描いた絵本はいろいろありますが、刀根さんの優しさにあふれたこの絵本は特におすすめです。
ククーは、大好きな場所を取り戻すことができたのでしょうか。
弟妹ができた子どもたちに、そっと読み聞かせてあげたい絵本です。