ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

本を直す

手製本の美篶堂が教えてくれます。

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『美篶堂とはじめる本の修理と仕立て直し』美篶堂/著、本づくり協会/監修、河出書房新社

図書館では本の修理をします。
ページが外れたり、破れたり、簡単な修理で直るものもあれば、一度解体して組み直さないといけないような大修理もあります。

修理をする前にする大事なことは、「この本は修理されることを望んでいるか」見極めること。

本を直すことは、本との対話に似ています。

大切にしている本を自分の手で直してみたい人には、ぜひこの本を。

生き方を選ぶ

帯の文に惹き付けられました。

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『れんげ荘』群ようこ/著、角川春樹事務所

月10万円で、心穏やかに楽しく暮らす。

残りの人生を暮らせるだけの貯金をつくり、高給取りのキャリア職を早期退職して、安アパートに引っ越したキョウコ45歳。

月10万円で、必要最低限のものだけで暮らす。

心穏やかに暮らせそうに見えるけれど、実際には、想像していなかった問題や不便さに悩み、「何もしないこと」に慣れずに悩み、働いていた頃の思考から抜け出せずに悩み…。

嫌気がさした生活の全てを捨てて、新しい生活をはじめても、それで全てが解決するわけでも、自分がすっかり変わるわけでもない。
「自分が望んだはずの転換にまた悩まされる」ジレンマ、とてもリアルです。

贅沢ではなくても、豊かな生活。

ちょっとあこがれます。

命のリレーの物語

バートンの名作絵本の改訂版。

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『せいめいのれきし 改訂版』バージニア・リー・バートン/文・絵、いしいももこ/訳、まなべまこと/監修、岩波書店

1964年に生まれた絵本ですが、現在の知見に合わせて2015年に内容の改訂が行われました。
子どもたちに正しい知識を届けるためには必要なのかもしれませんが、読みつがれてきた絵本の内容が変わってしまうのは、さみしいと感じる人も多いのではないでしょうか。

それはさておき。

これは壮大な命の歴史の絵本です。
地球上に生命が誕生したときから現代までを、劇仕立てで展開していきます。
現代に近づくほど、時の流れがゆっくりと描かれていくことで、今の私たちの生活も長い生命の歴史のなかの一幕なのだと思いを巡らせることができます。

子どもの時に体験してほしい、ひとつの舞台を見ているかのような素敵な絵本です。

家守

ヤモリじゃなくて、イエモリです。

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『家守綺譚』梨木香歩/著、新潮社

梨木作品のなかでも支持する人の多い『家守綺譚』。
私も大好きな作品です。

梨木さんは不可思議を飄々と描く天才だと思います。
面白いんですよね。

データベースの紹介文を引用させていただきますね。

「-本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。」

なんかもう、面白くないですか?

とにかく一度読んでみてほしい。
そんな1冊です。

猫のおんがえし

ふんわりしたかわいい絵にひそむ、意外性。

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『くつやのねこ』いまいあやの/文・絵、BL出版

民話「長靴をはいた猫」をアレンジした絵本。
貧しい靴屋が、いっぴきのねこと暮らしていました。お客さんがさっぱりこず、お店をたたむしかないかと途方ににくれる靴屋に、ねこはよい考えがあると言い、じぶんのために立派なくつを作ってもらいます。そして…。

この絵本のいいところは、昔話の残酷性を残しているところだと思います。
最近は、退治されるはずの悪者が「改心して一緒に仲良くめでたしめでたし」というラストに書き換えられる民話もあるようです。
残酷な描写はよくない、と、避ける傾向があるんですよね。
それが本当にいいことなのか、いろんな意見があると思います。
野村ヒロシさんの『昔話は残酷か―グリム昔話をめぐって』を読んでみて、考えてほしい論題です。
ハッピーエンドの裏側にある、残酷。

この絵本は、ふんわりした絵がかわいらしい現代絵本なので、お話もふんわりふんわりしているのかと思っていたので、読んでみて「おおっ!」と思いました。
意外性、ありました。

少女のはじめて物語

本編全6巻。ラストがね、いいんです。

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RDG レッドデータガール荻原規子/著、KADOKAWA

荻原規子さんの描く、現代日本を舞台にしたファンタジー
主人公の泉水子は、大きな影響力を持った存在なのに、どこまでも控えめな女の子で、そのガツガツしてない感じ、キラキラしすぎない感じが何ともいいのです。

姫神、山伏、陰陽師など、日本古来の不思議な力をもつ人々が勢揃いします。でもみんな高校生。
大きな力を持つけれど、まだ不完全な子ども。
自分を誇示したり、妬んだり、悩む姿は等身大の高校生です。
学園ものであり、恋愛ものであり、ファンタジーであり。
いろんな要素を楽しむことができる物語です。

荻原規子さんの、日本神話や神仏信仰に対する深い造詣も覗うことができます。
現代日本の高校生のお話なのに、違和感なく不思議な世界が描けるのは、荻原さんだからこそ。
そしてとてもおもしろい。
これに尽きます。

そして酒井駒子さんのイラストがいい!