ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

誰かの特別な場所

どこにでもいる私の物語。

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『どこにでもあるどこかになる前に。』藤井聡子/著、里山

個性を消す再開発、みなと同じ幸せを迫る閉鎖性…それでもこの地を愛したい!
富山にUターンしたアラサーライターの“第二の青春”エッセイ。

私が暮らす寄居町も市街地活性化計画真っ只中なので、他人事ではなく読みました。

「この場所らしさ」ってなんだろう。
守っていくべきことと、新しく築いていくべきこと。

暮らしやすい場所を新しく提案することは、それまでの暮らしを捨てなさいと言うことと同じなのかもしれない。
ちょっと不便で、雑然としていて、混沌としている場所でも、それは歴史であり、生活そのものであり、簡単に捨てていいものではないだろう。

なにもかもが「きれい」に「スタイリッシュ」になっていくことに抵抗があって当たり前。
街をつくるのはそこに集う人々だということを忘れないようにしたい。
忘れないでほしい。

この本は、自分のことを読んでいるような感覚でした。
富山を寄居に置き換えて、映画や雑誌も別のワードに置き換えるだけで、そのまんま私の物語。

寄居町が、どこにでもあるどこかになってしまわないように。

読書会@リカ

7月12日、寄居読書会でした。
約半年ぶり、新型コロナ対策をしながら6名が集まりました。

第19回目、課題本は梶井基次郎檸檬』です。
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檸檬はとても短いお話で、主人公の心情が綴られているだけで人が出てきません。
それもあってか、「何度読んでも頭に入ってこなかった」という意見がちらほら。
起承転結のようなわかりやすい物語がないので、とらえどころがない印象なのですね。
ほかに「若さを感じる」「自分にとっての檸檬とはなにか」といった感想がありました。

私はこの話を映像的に覚えていて、積み上げられた本の上の檸檬の黄色や、暗がりに明るく灯った果物屋さんが、鮮明に見えるようでした。

実は今回、ひとつの区切りの会でした。
主催してくれていた人が寄居を離れることになったのです。

寄居読書会は、メンバーみんなで引き継いで続けていくことになりました。

ちょっとゆるやかな形になるかもしれないけど、本好きのみんなで集まってワイワイ話ができる場所は守っていきたい。
みんなの思いは一緒でした。
嬉しいです。

とても素敵な場所を作りだしてくれた主催さんには、本当に感謝です。
離れてしまっても、つながっていられますように。

次回の読書会は9月になりそうです。
コロナの状況をみながらになりますが、本好きが集まれる場所、守っていきます。

猫のいる家

家がいちばん。

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『猫のいる家に帰りたい』仁尾智/短歌・エッセイ、小泉さよ/イラスト、辰巳出版

歌人、仁尾智さんの13年間の猫短歌とエッセイ。

ほっこりとする短歌も、ちょっと切なくなる短歌も。
猫好きさんのあるあると願望と祈りがつまっています。

小泉さよさんが描く猫たちは、みんなふっくらと幸せそう。
短歌の世界とぴったりと合っています。
どこにでもいそうな猫たちは、眺めているとあの時のあの猫に見えてくる、不思議。

飼い猫について描かれた文章はすべて「のろけ」だ、という言葉に「だよねー!」とニヤニヤしながらうなずくのでした。

猫のいる日常がちょっと楽しくなる1冊です。

風町

行ってみたい場所。

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『風町通信』竹下文子/著、ポプラ社

「風町」と呼ばれる架空の町でひっそりと紡がれる、ちょっと不思議で心地よい日々。
31のファンタジー短編集です。

文庫本になったと知って、この表紙を見たときの喜びといったら。
猫さん、素敵ですよね。
ファンタジーの世界への入り口は、こうでなくては。

優しくて不思議で静かな世界。

この物語を知っているということが、ひとつの宝物です。
『木苺通信』とあわせてどうぞ。

富士山

無視できない存在。

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『富士山、2000年の秘密』戸矢学/著、かざひの文庫

なぜ富士山は『古事記』に記述がないのか。

同郷の戸矢学さんが書いた本。

この本を手にするまで、古事記に富士山のことが書かれていないとは知りませんでした。
圧倒的な存在感を放つ日本の霊山、富士山。
どうして古事記に無視されたのか、なるほど気になります。

古事記や日本の神話、神社など、興味はあるけど知識がない私。
日本の神様の名前など、覚えられなくて、覚えるのを諦めた過去があります。
風水となるとまったくわかりません。

そんな私でも、難しいな、と途中思いながらも興味深く読みました。
そしてその謎解きが面白かった!

日本にもこんなにワクワクする謎があるよ!と、ダヴィンチ・コード好きな人に教えてあげたくなった1冊です。

ほんやら

猫がいる風景。

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『京都ほんやら洞の猫 』甲斐扶佐義/著、エディション・エフ

カフェ「ほんやら洞」の店主であり写真家の甲斐扶佐義さんの猫写真集。

京都のカウンターカルチャーの拠点だったという「ほんやら洞」は、4年前に火事で全焼したそうです。
焼け残ったネガ、プリントの中から救出した写真を集めて、猫をテーマにまとめたのがこの写真集。
長年撮り続けてきた、貴重な写真の数々です。

モノクロの写真の数々からは、猫を見つめるあたたかいまなざしと共に、京都の街の空気、移り変わる時代の一場面を見ることができます。

京都の、猫と人々の暮らし。

そこにある暮らしを感じることができる、あたたかい写真集です。

水惑星

わたしたちは水です。

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『水の手紙 群読のために』井上ひさし/著、萩尾望都/絵、平凡社

すべての水はひとつにつながっています。
子どもたちの未来と水惑星・地球の行方への祈りをこめて。

これは、2003年に井上ひさしさんの出身地である山形県で上演された群像劇の台本です。

地球温暖化、水争い、水の問題は、やがて地球の未来、子どもたちの未来を脅かす。
水にまつわる幅広い内容を取り上げながら、大事なことをとてもわかりやすくシンプルに伝えています。

井上ひさし萩尾望都のコラボレーション。
萩尾望都さんの美しいイラストに惹かれてこの本を手に取る人も多いかもしれません。

美しいこの本が、水の話に関心を持つきっかけになるといいです。