和菓子は芸術だ
タイトルがいいですよね。
『和菓子のアン』坂木司/著、光文社
デパ地下の和菓子屋さんで働きはじめたアンちゃんのお話。
和菓子の奥深さに触れることができる、お仕事ミステリーです。
恥ずかしい話、上生菓子を食べる機会がそんなにないので、和菓子の世界がこんなにも奥深いとは知りませんでした。
季節を告げる芸術品です。
どら焼きばっかり食べてちゃだめだなって思いました。
アンちゃんを取りまく登場人物たちはみんな個性的で、和菓子にまつわる謎をとくうちに、和菓子店「みつ屋」に行きたくなってしまいます。
アンちゃん18歳。
ちょっとぽっちゃり。
将来何がやりたいのか、わからない。
自分に自信もない。
等身大のアンちゃんに、共感できるポイントがきっとあると思います。
坂木さんの小説はどれも面白く、物語に引き込む力があります。
最初に読む坂木作品の1冊目としていかがでしょうか。
生きること愛すること
子どもの頃、通っていた歯医者さんの待合室に置いてあり読んだことを覚えています。
『100万回生きたねこ』佐野洋子/作・絵、講談社
子どもの頃は正直、よくわからずに読んでいました。
猫の絵本だから手に取っていたという感じ。
いろんな人生(猫生?)を生きられていいなあとか、そんなことを思っていたと思います。
大人になってあらためて読んでみると、感じ方も受けとめ方も、子どもの頃とはまったく変わっていました。
こんなに哀しく、愛に満ちたお話だったとは。
長く愛され読み継がれている絵本。
これからも子どもに読んでいってほしいです。
大人になってからも、ぜひ一度読んでみてください。
最後に手にいれるものは、愛でありたい。
みんながプリンセスだった
中学生の頃、ボーッと生きていた私は、友達のことで悩むこともなく毎日ほんとにボーッと過ごしていました。
幸せのような、もったいないような。
『王妃の帰還』柚木麻子/著、実業之日本社
私立女子校に通う中学2年生。
ある日、クラスの頂点に位置する姫グループから、滝沢さん(王妃)が追い出されてしまう。そしてなぜか私たちの地味で平凡なグループに滝沢さんを迎えることになり…。
穏やかな日常を取り戻すため、王妃を無事に帰還させることができるのでしょうか。
柚木さんの作品は、女性が普段見せていない部分、見ないようにしている部分を結構あけすけに描くので、読んでいるとそのドロドロした部分に足をとられて身動きがとれなくなってしまうことがあります。はやく抜け出したいこのドロドロから。いままで目を背けてきたことに対峙させられるので、しんどくて読めなくなることもありますが、それほどに柚木さんの描く女性がリアルなんだと思います。
この本は、中学生のお話なのでドロドロはしていませんが、女の子の気持ちの痛みに触れて、チクッとします。
女ってむずかしい。
でも、女っておもしろい。
かつての女の子も、現役の女の子も、みんなに読んでみてほしい1冊です。
猫のプライド
猫って高いところが好きですよね。
『てっぺんねこ』C・ロジャー・メイダー/作、灰島かり/訳、ほるぷ出版
高いビルのバルコニーや屋根の上がお気に入りの猫。
ある日そこに鳩がやってきた。飛びかかるけど、鳩は飛んで逃げて、猫は飛べすに落っこちてしまいます。
ケガはしなかったけど、猫のプライドはズタズタに…。
猫のプライド、高そうですよね。
猫って、怖がりのわりに、それを見せまいとするところがある気がします。
嫌いなことは徹底して嫌いだし、無理強いするとものすごく怒る。
安全圏にいるときの猫は、無敵な表情をしています。
そんな猫が愛おしい。
ビルから落っこちる猫の姿がかわいい絵本。
猫は高いところから落ちても着地できるので、心配しないで読めますよ。
誇り高い猫たちのプライド、守ってあげたくなります。
すべての猫好きに。
夏休み
お盆なので、今週はブログもお休みします。
で、お休み前の投稿。
いま、京都に来ています。
旅のお供はこれ。
森見作品でいちばん好き。再読中です。
京都、怪異、大学生…など、森見ワールドのいろんな要素が詰まっています。
私が特に好きなのは「宵山金魚」と「宵山劇場」。
森見ワールド全開です。
私は大学で演劇をやっていたので、どこか懐かしくも感じました。実際にはこんなのあり得ないですけどね!
幻想的でありハチャメチャであり。
何度でも読みたくなる1冊です。
今日は下鴨納涼古本まつりに行ってきました。
素敵な出逢いがたくさんありました。
会場で配っていたうちわ。
暑かったのでありがたかった!
じっくり見て歩いて、下鴨神社にお参りして、気づいたらあっという間に5時間が経っていました。
河合神社で休んでいたら、突然のスコール。
雨がやむのをぼんやりと待っていた1時間が、とても贅沢なひとときでした。
では、また来週。
美しきユニコーン
佇まいに惚れた、完璧な1冊です。
『完全版 最後のユニコーン』ピーター・S・ビーグル/著、金原瑞人/訳、学習研究社
表紙のユニコーンの絵は、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵しているタペストリー「囚われのユニコーン」です。
美しいですよね。
日本ではあまり馴染みがない架空の生物ですが、歴史は深く、語り伝えられているユニコーンの生態なども、どこか美しく幻想的です。
この本は、地球上で最後の一頭になってしまったユニコーンをめぐる物語。
最初は図書館で借りて読んだのですが、その内容と表紙の絵と本の佇まいに惹かれ、どうしても手元にほしくて購入しました。
今は絶版になっているので、残念ながら古本しか手に入りません。
ぜひ図書館で、手にとってほしい本です。