千年の読書
通りすぎていった本たち。
『千年の読書 人生を変える本との出会い』三砂慶明/著、誠文堂新光社
人生を変える本と出会えるのは偶然なのか。
本に人生を何度も助けられてきたという書店員が綴る読書エッセイ。
冒頭で、俳優を目指していた著者の友人の話が出てきます。
サン・テグジュペリの『夜間飛行』を読み、パイロットになることを決意した男。
実は私の知っている人なんです。
私が舞台衣裳の仕事をしていた頃、衣装を担当した劇団の劇団員でした。
出会った頃はまだ俳優で、何度か一緒に舞台を創り、しばらくしてパイロットになる夢をかなえるべく彼は劇団を離れていったのでした。
この『夜間飛行』の話も、その当時に聞いていた気がします。
本人から聞いたのか、まわりの仲間から聞いたのか、はっきりとは覚えていないのですが、本との出会いで人生を決めた彼のことを「こいつすごいんだよ!」と、仲間たちが誇らしげにしていたことはよく覚えています。
私の人生を変えた本はなんだろう。
もう出会っているのだろうか。
本の内容より、本の存在によって、人生が動いている気がする。
私にとって読書は、そういうものかもしれない。