ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

よみがえる

変態→天才と脳内変換。

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『よみがえる変態』星野源/著、文藝春秋

音楽活動にドラマや映画の撮影、執筆活動。
心身ともに休まる暇もなく働き続け、ある日、病に倒れる。
復活までの一部始終を惜しげもなく綴ったエッセイ。

突然ですが星野源さんが好きです。

きっかけは、ずいぶん前のことですが、大人計画社長、長坂まき子さんの『大人計画社長日記』を読んだこと。
文庫版の最後に、「大人計画フェスティバル」というイベントに寄せたスタッフとキャストによる証言が載っているのですが、その怒濤ぶりに大半の人が「大変だった」「もう一度やりたいかと聞かれたら二度とやりたくない」というようなコメントを載せているなか、星野源さんは「いつもの感じでやりましたー」的な、飄々したコメントだったのが印象的で。

なんだこいつ、となりました。
おまけに名前が素敵だわ、と。

あ、この『大人計画社長日記』もとてもいい本です。
「仕事を楽しむ」ということについて考えるきっかけを与えてくれる本。
私が大切にしている仕事観と一致している部分が多くて、私にとって大事な1冊です。
この本もいつか紹介したいと思います。

星野源さんは埼玉県出身で、寄居町フィルムコミッションが全面協力で撮影した映画に出演していたりと、身近で名前を見かける機会も多く、ずっと気になる存在だったのですが、おそらく全国の多くの皆さんと同じように、ドラマ「逃げるは恥だか役に立つ」で一気に加熱しました。

エッセイ本もすべて読んでいるのですが、なかでもこの本が一番グッときます。
今の活躍の様子からは想像もできないほどの、過酷な闘病生活。

何よりこのエッセイは、赤裸々すぎます。
倒れるまでの日々、その日のこと、闘病の日々、その後のこと。
時系列に、当時の精神状態が伝わってくる。
「疲れた」ということだけで1章を書いてしまう、余裕のなさ。
追い込まれている日々の息遣いのようなものが、痛いほどに伝わってくる。
読んでいて苦しくなるほどです。

劣等感の持ち方とか、幸せのとらえ方とか、カッコ悪いと感じる人だとか、ちょっとしたことだけど自分にとっては大事な部分の考え方が似ていて、読んでいて自分を肯定されているような気分になれるのも、星野源さんに惹かれる理由かもしれません。

下世話な話もいっぱいなんですが、そのなかに見える、本質のようなもの。
俳優、音楽、執筆、すべてひっくるめて「星野源」が好きです。