ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

読書会@ネコオドル

5月12日、ネコオドルで読書会を開催しました。
寄居読書会の第12回目です。

課題本は中島敦山月記
参加者は5名。
めずらしく全員女性の女子会となりました。

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山月記』というと高校の授業で読んだという人多いのでは?
私も高校生のときに読みました。
今回はそれ以来の『山月記』再読です。

一人で読んでいるときから、音読したくなる作品だなと思いました。
声に出して読みたくなる文章。
読書会ではみんなで輪読したのですが、とても心地よかったです。

臆病な自尊心と、尊大な羞恥心。

「虎になっても別にいいじゃない?」という意見もありましたが、人を食べるのはちょっと…という結論に。
私も虎になってもいいけど、そのときには人間の記憶は完全になくなっていてほしい。
私くらいの小物だと、せいぜい猫になってネズミをとるくらいかなあ。なんて。

李徴のことを考えていたら、「本当の自分はこんなもんじゃない」と思い、今の自分を認められなくて「これは仮の姿だ」と思っている、そんな人をふと思い浮かべました。
永遠のモラトリアム。
少女でいうと、白馬の王子様を待ち続けておばさんになっちゃう感じも似ているかもしれません。

自分は誰からも羨まれ、認められる人間のはずだ。

認められたい。
恥はかきたくない。
自分の凡庸さを知りたくない。

ありのままの自分を認め、うまく折り合いをつけらる。
恥をかけるようになるのも、大人になった証拠ですよね。
私は恥をかくのがこわくて、失敗をおそれて何もできない子どもでした。
だから、李徴の気持ちがわかる気がします。

読書会で中島敦の年譜もみんなで確認したのですが、そこでも結構盛り上がりました。
敦ってこういうひとだったんだ…!
病弱で神経質で清廉潔白な堅物、みたいな印象を勝手に抱いていた私は、覆されました。
学生の頃は意外にも好事家で、勤務先の女学校では女生徒の心を惹きつけるアイドル教師だったようですよ。
こんな敦けっこう好きかも!という声があがって、生きていたら伝えてあげたいくらいでした。

心の葛藤、自分との戦いに打ち勝つには、虎を飼い慣らす猛獣使いにならなくてはいけない。
なにより周りの人との交わりをないがしろにしてはいけない。

せいぜい猫にしかなれない私ですが、心の中の猛獣とうまく付き合っていきたいと思いました。

また読む機会が持ててよかった『山月記」読書会でした。