ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

読書会@ネコオドル

6月16日、ネコオドルで読書会を開催しました。
寄居読書会の第13回目です。

課題本は谷崎潤一郎『猫と庄造とふたりのをんな』
参加者は4名。

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この作品、今回はじめて読みました。
とんでもなくダメな男の物語。
庄造なんて古めかしい名前ですが、30歳男性です。
不倫の末に再婚した妻と、元妻と、愛猫をめぐる、しょうもない物語。
あまり谷崎っぽくないな、という印象がありました。

谷崎といえば『痴人の愛』を読んだという人が多くて、私もその一人でした。
大学の授業でファム・ファタル(運命の女、魔性の女)についての物語をいろいろ読んでいた中のひとつだったのですが、その話をしたところ、「リリーはファム・ファタルなのでは」という意見が飛び出しました。

そう言われて読み返してみると、リリーにはファム・ファタル的要素が!
周りの人間を翻弄しているその姿、まさに小悪魔的です。
当のリリーにはその気は全くないところがいいですね。
人間の踊らされてる感、滑稽さが際だって見えます。

「谷崎といえば」という印象を話し合ったのですが、みなさん共通して『知人の愛』や『刺青』などの倒錯したイメージが強いので、この作品は意外な感じで、「落語みたいだ」という意見も。まさに。

その点も、リリーをファム・ファタルと考えると、なるほど。
一転してこの滑稽物語も、谷崎的作品群に落ち着いてしまいました。

人間を猫に置き換えるだけで、こんなに平和な物語になるのだなあ。

ひとりで読んでいたら気づけなかった視点に出会えるのが、読書会の魅力のひとつ。
楽しいひとときになりました。