パパ猫
ピクニックに連れてって。
『とうさんねこのすてきなひみつ』メアリー・チャルマーズ/ぶん・え、あきのしょういちろう/やく、童話館出版
ピクニックに行きたい子猫たちと、父さん猫のサプライズ。
猫の絵本というより、人を擬猫化したという印象の絵本でした。
猫じゃなくてもいいんじゃない?という思いをぬぐえないまま読んでしまった私は、子どもの心を失ってしまったのかも。
どうしてそんなひねくれた読み方になってしまったのかというと。
私、あまり教訓じみたお話は好きじゃないのです。
物語のなかに気づきがあるのは素晴らしいことだと思います。
でも、それを言葉にしなくてもいいじゃないか、と反発心が出てしまうのです。
子どもには純粋に物語を楽しんでほしい。
この絵本も、子どもが読んだら純粋に楽しいお話なんだと思います。
私のひねくれ心が飛びだしてしまった1冊でした。
外は嵐
ヒグチユウコさんの美しい装画。
小説から歌集、漫画や絵本など、幅広いジャンルから本を紹介しています。
日記形式なので、次に手にする本への流れがとても自然で、穂村さんの日常の読書を一緒に追体験しているかのような感覚になりました。
歌人の穂村さんらしく、短歌がたくさん散りばめられていて、思いがけず素敵な短歌をたんまり堪能できたのもよかったです。
それにしても興味深い本ばかり。
私って、ブックガイドや作家さんの読書録などを読むと、いつも読みたい本をたくさん見つけるんですけど、なぜか実際にそれらの本を読むところまではいかないことが多いんですよね。
読んだ気になっちゃってるのか。
なんなのか。
でもやっぱり作家さんの読書体験って興味深い。
まずは『おなみだぽいぽい』を読もうと思います。
聞こえるよ
耳をすますと。
『きこえるきこえる』マーガレット・ワイズ・ブラウン/作、レナード・ワイズガード/絵、よしがみきょうた/訳、小峰書店
目にごみが入り、お医者さんに包帯を巻いてもらった子犬のマフィン。
目をつぶったときのように真っ暗だけど、大丈夫。
耳をぴんとたてると、どんな音がきこえるかな?
大胆でポップな色使いが楽しい。
折り紙のような単色の組み合わせなのに、その表現はとても豊かです。
シンプルなのに豊かって、とても素敵です。
とても憧れる世界。
これは「音」を楽しむ感覚を大事にした絵本。
ワイズ・ブラウンが選んだ音のチョイスが素敵で、思わず声に出して言いたくなります。
子犬のマフィンと一緒に耳をすませて「音」を感じるこの『きこえるきこえる』は季節ごとのシリーズもあって、ワイズガードは「なつのおと」の絵も手がけています。
私はブラウン&ワイズガードコンビの絵本をコレクションしています。
ワイズガードは作品によって絵のタッチが変わるので、新しい絵本に出会うたびに発見がある。
コレクター心をくすぐられてます。
たちどまる
裏表紙のアマビエが美しい。
パンデミックを前にあらゆるものが停滞し動きを止めた世界。
イタリア、キューバ、ブラジル、アメリカと、世界を渡り歩いてきた漫画家・ヤマザキマリさんが、たちどまって考えたこと。
誰もがたちどまざるを得なくなった。
実は私たちが必要としていた時間なのかもしれません。
そう前向きに「今」を捉えることは大事なこと。
世界を俯瞰し、自分や社会と向き合う。
自分の頭で考え、自分の言葉をしゃべる。
日本人らしさの良い点も悪い点も、ヤマザキさんの文章を読むと素直にうなずけてきます。
冷静に世界のなかの日本を見つめ直すにはとてもいい本です。
ヤマザキさんの言葉には説得力がある。
この本が出版されてから半年以上が経ち、状況も刻々と変化していますが、根本にあるものは変わらない。
冷静に、自分の言葉を見つけていきたいです。