自分だけの服
気張らず、気取らず、自分らしく。
『服のはなし 着たり、縫ったり、考えたり』行司千絵/著、岩波書店
自分や母や頼まれた相手のために、この世に1枚の服を縫う。
洋裁は独学だから、商売はせず、あくまで目の前の人のために。
自分を取りまく服とおしゃれの歴史を振り返りながら、服について語ったエッセイ。
趣味で洋裁をする人はたくさんいると思いますが、それが評判を得て個展の開催にまでつながってしまうなんて人はそうそういないと思います。
夢のような話。
私も服づくりをしていた時期がありました。
自分のためではなくて、演劇の衣裳作りをお手伝いしていたのですが、洋裁を学んだことはなくて独学だったので、やはりちょっと自信が持てない部分があったように思います。
「独学」って、土台が不安定というか。
そのままプロの世界に入ってやっていくには、強靱な精神力と自分を信じる力が必要になると思います。
衣裳仲閒には、独学である程度認められた人でも、さらに高みを目指すために学校で学び直す人もいました。
この本からは、独学だからこそのいい面を感じることができました。
好きで作る。
それに尽きますよね。
私も何か縫ってみたくなりました。
お気に入りの布で、好きなデザインで。
考えるだけでワクワクします。
服をつくることが特別なことではなかった時代が、巡り巡ってまたやってくるといいですね。
アパレル業界のこと、素材のこと、経済のこと歴史のこと社会のこと…。
服について考えるきっかけを与えてくれる、味わい深い本です。