歴史に触れる
ヴェネチアの横顔。
『地図のない道』須賀敦子/著、新潮社
友人が贈ってくれた1冊の本に誘われて、ヴェネツィアのゲットへ向かった。
水の都ヴェネツィアの歴史を巡るエッセイ。
そこに生まれ育った人にしか見えない世界というのはあると思う。
ヴェネツィアといえば、旅行で訪れる美しい都というイメージですが、そこで暮らしてきた人々には、もちろん様々な歴史がある。
そんなことを、改めて思い出させてくれる本です。
須賀敦子さんが自らの目で見て、肌で感じ、体験から得たものを言葉にして伝えてくれる。
それゆえまっすぐで偽りのない、正しい景色が目の前に広がります。
ヴェネツィアの影。
知るほどに魅力が増すのは、須賀敦子さんのイタリアへの愛が言葉ににじみ出ているからでしょう。
旅行ガイドだけでは知ることのできないイタリア。
そこに生きる人々の息吹を伝える須賀敦子さんのエッセイは、なによりの旅行本です。