ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

森のピアノ

大切なもの。

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『クマと森のピアノ』デイビッド・リッチフィールド/作、俵万智/訳、ポプラ社

ある日森の中でピアノを見つけたこぐまのブラウン。
ピアノの演奏は森のクマたちにも大人気です。
やがて森を出て、街でピアニストとして成功しますが…。

「成功する」ってどういうことなんだろう、と考えさせてくれる絵本。
そして、大切な存在に気づかせてくれる絵本。

好きなことを仕事にすると、好きだという感覚がわからなくなってしまうといいます。
好きを仕事にすることは理想的だけど、むずかしい。そんなことを思いながら読みました。

「好き」の原点を見失いそうになった時、この絵本を読んでほしい。
大切なものはきっと一番最初からそばにあったんだと思う。

田舎を離れて都会でがむしゃらにがんばっている人に贈りたい絵本です。

しずく

水の絵本。

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『しずくのぼうけん』マリア・テルリコフスカ/さく、うちだりさこ/やく、ボフダン・ブテンコ/え、福音館書店

バケツから飛び出したしずくの、ながーい冒険の旅。

水のことがよくわかる絵本。
姿を変えて世界中を飛びまわる「しずく」の様子を描いています。
テンポ良くリズミカルに進むお話は、声に出して読むのにぴったり。

きれいになりたくてクリーニング屋さんに行ったり、病院に行ったり、冒険物語としてもワクワクと楽しめます。

長く読み継がれている、水の絵本です。
はじめての科学絵本としていかがでしょうか。

街を灯す

本屋好きの本。

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『街灯りとしての本屋』田中佳祐/著、竹田信弥/構成、雷鳥社

街の小さな本屋さんをはじめた11店舗の店主が語る、本屋をはじめるまでのこと、そしてこれからのこと。

双子のライオン堂さん発行の文芸誌『しししし』のメンバーが贈る、本屋の本。
それぞれの店主からこれから本屋をはじめたい人へのメッセージや、本屋開業までに必要な具体的な情報もまとめられていて、これから本屋をはじめたい人にはぜひ手に取ってほしい1冊です。

街灯りとしての本屋。
小さな小さな本屋をはじめた身からすると、これほど希望の込められた言葉はありません。

人々が集まり、出会い、街をつくる。
そこにある本屋になりたい。

この本を読んで、「私ひとりじゃない」と感じて、あたたかい気持ちになりました。
本屋になったきっかけは人それぞれだけど、みんな同じ方向を向いている。

街の小さな本屋、アツいです。

パリの

おじさん大集合。

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『パリのすてきなおじさん』金井真紀/文と絵、柏書房

パリのおじさんをインタビュー&スケッチ。

おしゃれな装丁、パラパラめくった感じもおしゃれ。
軽い本なのかと思いきや、いろいろなおじさんの生き様からフランスという国や世界を見ることができる、深い本です。
ニヤニヤとかクスクスとか、とにかく楽しく読んでいるうちに、世界の縮図を感じて考えさせられたり。

パリのおじさんって素敵です。
日本のすてきなおじさんの本も、ぜひ作ってほしい。

えふ

身近に潜む不思議の穴。

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『f植物園の巣穴』梨木香歩/著、朝日新聞出版

歯痛に悩む植物園の園丁が落ちた椋の木の巣穴の向こう側は、異界でした。

動植物の摩訶不思議。
淡々としていてユーモラスで、気をつけていないと迷子になる。
いつの間にかあっちの世界に行ってしまうので、注意が必要です。

梨木香歩さんのそんな作風が好き。
作品によっては混沌具合が深くて難しいものもありますが、これはそんな不思議を楽しめるお話です。

続編が出版されたというので、あらためてこの作品を読みたくなりました。
前に読んだのはもう何年前でしょう。

穴の向こうに不思議の世界というとアリスのようですが、これは日本のアリスでしょうか。
そんなことを考えながら再読したい1冊です。

みずみずしい

さすらいのウェイターの話がお気に入り。

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『やわらかなレタス』江國香織/著、文藝春秋

江國香織さんのエッセイ。
美味しそうな食べ物がたくさん出てきます。
本にまつわるお話も所々にあり、その本もまた読んでみたくなる、本好きには嬉しいエッセイでもあります。

江國さんの選ぶ言葉、やわらかい文章が心地よくて、学生の頃は貪るように読んでいました。
今、江國さんの文章に触れると、あの頃の、青春真っ只中の自分が思い起こされて、どこかくすぐったい気持ちになります。

素敵な装丁、と大切にしているこの本。
ふと、思い立って確認したら、装丁は名久井直子さんでした。

そうと気づかずに手にした宝物本が、尊敬する仕事人のお仕事だったと知ると、これほど嬉しいことはないし、ぶれない目利きをした自分を誇らしくも感じます。

言葉から、文章から、うるおいを感じる。
江國香織さんのエッセイは、いつもみずみずしい。

たどり着いた場所

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『ローズのにわ』ピーター・レイノルズ/作、かとうりつこ/訳、主婦の友社

ティーポットにのって冒険の旅にでたローズ。
世界中を回り、最後に見つけたものは…。

表紙は色鮮やかですが、途中までセピア色のこの絵本。
レイノルズらしい優しさあふれるメッセージが込められています。

これも最近、古本で手に入れた絵本です。
素晴らしい絵本がすぐに絶版になるのはもったいないことです。
それに、素晴らしい絵本を手放してしまう人がいることもかなしい。
そのおかげで私が手にすることができたので、複雑ではありますが…。

宝物のような素敵な絵本を、1冊でも多く伝えていきたいです。