森のピアノ
大切なもの。
『クマと森のピアノ』デイビッド・リッチフィールド/作、俵万智/訳、ポプラ社
ある日森の中でピアノを見つけたこぐまのブラウン。
ピアノの演奏は森のクマたちにも大人気です。
やがて森を出て、街でピアニストとして成功しますが…。
「成功する」ってどういうことなんだろう、と考えさせてくれる絵本。
そして、大切な存在に気づかせてくれる絵本。
好きなことを仕事にすると、好きだという感覚がわからなくなってしまうといいます。
好きを仕事にすることは理想的だけど、むずかしい。そんなことを思いながら読みました。
「好き」の原点を見失いそうになった時、この絵本を読んでほしい。
大切なものはきっと一番最初からそばにあったんだと思う。
田舎を離れて都会でがむしゃらにがんばっている人に贈りたい絵本です。
街を灯す
本屋好きの本。
『街灯りとしての本屋』田中佳祐/著、竹田信弥/構成、雷鳥社
街の小さな本屋さんをはじめた11店舗の店主が語る、本屋をはじめるまでのこと、そしてこれからのこと。
双子のライオン堂さん発行の文芸誌『しししし』のメンバーが贈る、本屋の本。
それぞれの店主からこれから本屋をはじめたい人へのメッセージや、本屋開業までに必要な具体的な情報もまとめられていて、これから本屋をはじめたい人にはぜひ手に取ってほしい1冊です。
街灯りとしての本屋。
小さな小さな本屋をはじめた身からすると、これほど希望の込められた言葉はありません。
人々が集まり、出会い、街をつくる。
そこにある本屋になりたい。
この本を読んで、「私ひとりじゃない」と感じて、あたたかい気持ちになりました。
本屋になったきっかけは人それぞれだけど、みんな同じ方向を向いている。
街の小さな本屋、アツいです。
みずみずしい
さすらいのウェイターの話がお気に入り。
江國香織さんのエッセイ。
美味しそうな食べ物がたくさん出てきます。
本にまつわるお話も所々にあり、その本もまた読んでみたくなる、本好きには嬉しいエッセイでもあります。
江國さんの選ぶ言葉、やわらかい文章が心地よくて、学生の頃は貪るように読んでいました。
今、江國さんの文章に触れると、あの頃の、青春真っ只中の自分が思い起こされて、どこかくすぐったい気持ちになります。
素敵な装丁、と大切にしているこの本。
ふと、思い立って確認したら、装丁は名久井直子さんでした。
そうと気づかずに手にした宝物本が、尊敬する仕事人のお仕事だったと知ると、これほど嬉しいことはないし、ぶれない目利きをした自分を誇らしくも感じます。
言葉から、文章から、うるおいを感じる。
江國香織さんのエッセイは、いつもみずみずしい。