ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

美味しいコーヒー

大人のためのおしゃれ絵本。

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『コーヒーの絵本』庄野雄治/作、平澤まりこ/絵、mille books

人気焙煎所・アアルトコーヒーの庄野雄治さんによる、コーヒーの絵本。
コーヒーの基本から淹れ方まで、お話仕立てで楽しくわかりやすく教てくれます。

平澤まりこさんの、かわいらしくてほのぼのとした絵が印象的。
飾っておきたくなる、おしゃれな表紙です。

そしてこの絵本、おうちで美味しいコーヒーを淹れたい人の味方です。

「絵本といいつつ、本当にコーヒーの本なんだね」と、コーヒー通の方から言われて、私も改めてこの本の魅力に気づきました。

そうなんです。
絵本と言っても、実用的な絵本なんです。
子ども向けの物語絵本と思って手に取らないあなた、もったいないですよ。
この本1冊で、コーヒーのことがよーくわかります。

家でおいしいコーヒーを飲みたいあなたにおすすめです。

ピースの意味

地元が舞台。

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『ピース』樋口有介/著、中央公論新社

埼玉県の長瀞町寄居町で、連続してバラバラ殺人事件が発生した。
事件の裏側に潜むものとはー。

ネコオドルがある寄居町が舞台になっているミステリー小説。
あまりミステリーは読まないのですが、これは教えてもらってすぐに読みました。

正直、回収しきれないことが多くて消化不良に陥りました。
でも、いろんな人に読んでもらって解説してもらったり、解釈を聞いたりして、最終的に「それでいいんだ」という結論に至りました。人物にも、行動にも、なんだか謎が残ってしまうのですが、それでいい。私がミステリー慣れしてないからではなくて、そういう作品らしいのです。

秩父周辺の方言や風土が描かれていて、地元の人には違う楽しみ方もできます。
こんな事件が本当に起きたら嫌だけど、フィクションだから楽しめる。

内容と関係がなさそうな表紙ですが、読み終わってから表紙を見たら、その意味がわかりました。
ピース。
平和の象徴と、欠片の、ダブルミーニング

特に地元の人に勧めたい、そして私に解説を聞かせてほしい(笑)ミステリー小説です。

オマージュ

文学に触れるきっかけに。

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『新釈走れメロス 他四篇 』森見登美彦/著、KADOKAWA

日本の文学作品5編が、森見節で現代の京都によみがえります。
山月記」「走れメロス」「桜の森の満開の下」など、教科書でもおなじみの名作ばかり。

月に1回の読書会で名作文学を読む機会が増えたので、この作品の面白さを再確認しています。
最初に読んだのは数年前ですが、その頃はそこまで元ネタの文学作品に関心がなかったので、「森見氏、よくやるなあ」という印象くらいで、純粋に森見ファンとして森見作品を楽しんでいただけだったのでした。
でも、いまは、元ネタに関する知識も少し増えたので、よりこのオマージュ作品たちを楽しめます。

そしてやっぱり思う。
「森見氏、よくやるなあ」と。

私が好きなのは「桜の森の満開の下」。
坂口安吾の作品はホラーのような、怪談の雰囲気が強いですが、森見氏の「桜の森の満開の下」は、哀しく美しい。現代のお話なので、より悲哀が伝わってくるのかもしれません。

元は祥伝社で出版されていた作品ですが、私が持っているのは角川文庫版。
表紙はおなじみ中村佑介さんのイラストで、眺めていると発見があっておもしろい。
千野帽子さんの解説までおもしろい、しゃれた1冊です。

美しい言葉

やさしいまなざし。

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『ワイズ・ブラウンの詩の絵本』マーガレット・ワイズ・ブラウン/詩、レナード・ワイスガード/絵、木坂涼/訳、フレーベル館

小さな生き物たちへのやさしい思いを感じる、ワイズ・ブラウンの詩の絵本。
レナード・ワイスガードが絵を手がけた、美しい1冊です。

愛嬌たっぷりの生き物たちが描かれた絵本。
抑えた色彩で、言葉の持つちからを引き立てています。

子どもたちがはじめて詩に触れる本としてぴったり。
1編1編、大切に大切にめくって読みたい詩の絵本です。

クロネコの人

クロネコヤマトの生みの親。

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小倉昌男 祈りと経営』森健/著、小学館

2005年6月に亡くなったヤマト運輸元社長・小倉昌男。「宅急便」の生みの親である名経営者は、現役引退後、私財46億円を投じて「ヤマト福祉財団」を創設し、障害者福祉に晩年を捧げた。語られてこなかったその理由と背景に、丹念な取材で迫ったノンフィクション。

宅急便といえばクロネコ
物心ついた頃には当たり前に存在していました。
「宅急便」がない時代があったんだ…そのくらい知識がない私でも、興味深くのめり込んで読みました。

名経営者として伝説となっているような人も、家族があり、苦悩があり、ひとりの人間であり。

この本のなかでは主に障害者福祉に捧げた晩年の小倉昌男と、人間としての小倉自身に焦点をあてているので、ヤマト運輸時代の伝説的事柄には、深くは触れられていません。でも、ひとりの人間としての小倉昌男に迫るにはこの本をおいてないでしょう。これをきっかけに、ヤマト時代の経営者としての小倉昌男に関わる本を読む人が増えそうな気がします。
小倉昌男の著書『小倉昌男経営学』は、不朽のロングセラーとなっています。

名経営者の、夫として、父としての姿に、涙があふれました。

猫が踊る

猫がワルツを。

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『ねこがおどる日』八木田宜子/作、森川百合香/絵、童心社

猫のしろとくろは、夜になるとワルツを踊ります。
でもそれは、リツコだけが知っていること。

ほんわかとした気分になれる、踊る猫の絵本です。

子どもだけが知っている、夜になると訪れる秘密の時間。
なんだかワクワクしますよね。

猫が踊る絵本はいろいろと読みましたが、この絵本は猫が主役ではなく、子どもの世界がきちんと描かれています。
私のうちにも踊る猫がいるといいな、と、夢が広がります。

あたたかい絵が、お話のやさしい雰囲気にぴったりの、かわいらしい1冊。
猫を飼っている子どもたちに読んであげたい絵本です。