思い出の図書室
地球やな。
『図書室』岸政彦/著、新潮社
小学生の頃に通った、古い公民館の小さな図書室。
ひとりの女性の、思い出の物語。
ああ、これは私の物語だな、と思いながら、するすると読みました。
大阪弁が心地よくて、するすると。
公民館の小さな図書室、というのが私が子どもの頃に通っていた図書室と重なって、思い出がぽろぽろとこぼれ落ちてきました。
いまは立派な図書館になっているけど、昔は公民館の一室が図書室で、当時の私はその図書室が大好きだったけど、使いこなせていなかったなあと、今になってすこし悔しく思うのです。
きっと、たわいもない、子どもの頃の思い出のひとつ。
誰でも持ち合わせているけれどひとつとして同じものがない、やっかいな追憶。
そのなかで時折ゆらぐ女性の繊細な一面を描いた、静かで強い物語です。