忘れられない約束
大学生の頃は江國香織さんの本を読みあさってました。
『冷静と情熱のあいだ Rosso』江國香織/著、KADOKAWA
はじめて江國香織さんの作品と出会ったのは高校の図書室で、『きらきらひかる』でした。その時は大人の恋愛小説にあまりピンとこなかったのでした。
大学生になり、童話的な作品との出会いから徐々に江國作品にのめり込んでいき、この『冷静と情熱のあいだ』に出会いました。
別れたあとも心に残るひとつの約束。
当時はやっぱり、大人の恋愛のイメージでした。
別れたあとに、約束を何年も覚えていられるとか、相手も覚えている確信はないのに自分は約束を守るとか、そんなことすべてが、当時の私には想像もできない世界だったんですよね。
20歳の私にとって30歳はすごく遠くて、20歳の恋愛を30歳の私が忘れられないでいるなんてありえるだろうか?10年は果てしなく長い時間に思える。
ある意味、ファンタジーの世界だったんです。
でも今、主人公のあおいの年齢を過ぎて、いろんな経験を経てきて、この本を読むと、ありえないことじゃないな、と思えます。
30歳を越えた今でも、20歳の頃の恋愛はそんなに遠くない過去のこととして胸に刻まれているし、10年なんてあっという間でした。
私のように、若い頃に読んだ人は、主人公のあおいの年齢を越えてから、また読んでみてほしいなと思います。昔とは違ったリアルがあると思います。