借りたら返す
約束。
戦後の混乱期、漁村文書を収集・整理し、資料館設立を夢見る壮大な計画のもと、全国から大量の文書が借用された。
しかし、事業は打ち切りとなってしまい、大量の未返却の文書が残されてしまった。
後始末を託された著者の、古文書返却の旅。
森まゆみさんの『本とあるく旅』でこの本を知りました。
借りた古文書を何十年も返してないなんて!
そんなことがあるのかと強く興味をひかれて、この本を手に取りました。
網野さん自ら「失敗史」と言っているようにあまり誉められたことではないですが、律儀に頭を下げてまわった返却行脚はそれだけに終わらず、新たに得るものも大きかったようです。
借りたものは返す。
そんな当たり前のこともままならなくなるほど、社会全体が混乱し激動していた時代の空気に触れることができる、貴重な記録です。