ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

だから本をつくる。

大切な人に届けるために。


『あしたから出版社』島田潤一郎/著、晶文社

設立から5年目に綴られた「夏葉社」誕生までの日々、そしてそれからの歩み。

1冊1冊こだわりぬいて作られた本に、ファンも多い夏葉社。

いつかネコオドルで夏葉社さんの本を扱いたいな、とずっと漠然と考えていました。
そんななか出会った『第一藝文社をさがして』という本に後押しされて、夏葉社さんに連絡をとり、お取り扱いさせていただくことになったのですが、漠然としか知らなかった夏葉社さんについてもっと知りたいという気持ちからこの本を手に取りました。

とても失礼なことかもしれないけど、勝手に抱いていたイメージとは、まったく違いました。

夏葉社という社名も、作っている本も、なんなら島田さんの潤一郎という名前からも、「スマートなヤツ」という印象しかなくて、シュッとした感じでパパッとひとりで出版社はじめちゃった人なのかと勝手に思っていました、すみません。

でも全然違っていました。
すべては喪失からはじまっていたこと、挫折や失敗やつらい体験のあとに今があることが、飾らない文章からまっすぐに伝わってきました。

目の前のひとりのために本をつくり、届ける。
この人が作る本だから信頼できるんだ、と、腑に落ちた感じ。

この本をもっと早く読んでいたら、きっともっと早く連絡していたのに。
シュッとした人、という勝手なイメージで先送りしていたことを後悔します。
そういえば、メールを送っても一向に返信がなかったので、届かなかったのかもと不安に思いSNSのDMを送ったら「すみません、メール確認してたのに、返信するの忘れてました!」というメッセージが返ってきたことは、この本を書いた島田さん、この本に語られた島田さんのイメージにぴったりだったな、と、今になってフフっと笑ってしまう出来事でした。

大切にしたいものが何かがはっきりと見えている人は、強い。

10年目に書かれた『古くてあたらしい仕事』(新潮社)も、もう少し俯瞰的な視点から自身の思いをまっすぐに語っていて、あわせて読むのをおすすめします。