ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

歴史に埋もれる

元祖ひとり出版社。

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『第一藝文社をさがして』早田リツ子/著、夏葉社

戦前のひとり出版社「第一藝文社」の知られざる軌跡を描く。

戦前の小さな出版社に興味を持って調べる。
そんな風変わりなことをする人が私以外にもいたのかと、勝手ながら同士の活動報告を読むような気持ちでした。

私の場合は祖父の出版社ですが、早田さんは「滋賀県にあった」ということから第一藝文社に興味を持ったとか。
きっかけはどこに転がっているかわかりませんね。

そして、第一藝文社に関心を寄せていたのが早田さんだけではなかっという事に驚きました。
それより前から山本善行さんが興味を持って調べていたのだという。
戦前の小さな出版社に、どうして。
自分が祖父の出版社について調べているからこそ、その偶然性が興味深いです。

早田さんはとても丁寧に第一藝文社について調べていて、なかでも中塚道祐の親族に会えたことや、戦後に雑誌に書き残した記録があったことで、史実に厚みが出たのだと思います。

そして出版物からひもとける、さまざまな著者とのつながり。
これは私も祖父の出版社を調べているなかで、明らかになっていく過程が本当に面白い部分です。

本をつくっているのは「人」なんだと実感する。

私もこんな風に、祖父の出版社について調べたことをまとめて、きちんと残していきたい。
戦時中に仲閒と3人で立ち上げ、約3年半で50冊出版した、勢いのあった祖父の出版社。
その軌跡を、どこまで追えるか。

まさに旅のようです。