従軍記者
伝えたこと、伝えたかったこと。
『清六の戦争 ある従軍記者の軌跡』伊藤絵理子/著、毎日新聞出版
太平洋戦争末期、軍属の記者としてペンをとり続けた伊藤清六。
爆撃下の洞窟でガリ版刷りの新聞を作り続けました。
75年後、自らも記者となった著者が、祖先の足跡をたどるノンフィクション。
私も祖父の足跡をたどる調査をしているところなので、とても興味深く読みました。
私の祖父は作家で、出版社の経営者で、召集され軍属になり戦病死した人で。
横光利一に従事していたこと、出版された本や雑誌に寄稿した作品があることなどを手がかりに、作家としての祖父を追っています。
そのなかで、私が祖父について調べはじめるきっかけになった「舞台化映画化されるほどのヒット作になった本」が戦争協力と思われる作品だったとわかったことが、この調査を最後までやり遂げなくてはならないと決意させた出来事でした。
だから、著者の伊藤さんの気持ちはそのまま、私が抱いている気持ちと重なっていました。
軍歴証明も取り寄せ、戦地での足取りも追っています。
終戦間近ということもあり記録が少なく、同じ作戦に従軍した人の体験記を片っ端から読んでいるのが今の状況。
その合間に、祖父の実家が広島市中央部だったことで原爆の犠牲になっていることから、広島関連本も読み始め…。
戦争に関する本を読みすぎて、毎晩夢に見ます。
祖父と戦争は、切り離せないテーマになっています。
出版社時代の祖父のこと、「舞台化映画化されたヒット作」のことなど、まだまだ掘り下げなくてはいけないことがたくさんある。
一般には無名の人でも、たどっていけば生きてきた痕跡が残っている。
伊藤清六さんは記者で、私の祖父は作家で、自身が書いてきた記事や作品があるから、他の人よりは足跡がたどりやすいのかもしれません。
でも当時に生きた人々がほとんど残っていない今、すべてを知ることはとても難しい。
いつか、私が調べた祖父の足跡も、祖父が生きていた証として伝えられたら、「こんな人がいたんだ」と知ってもらえたら、嬉しいです。