砂漠の旅
ラクダとともに。
『水と礫』藤原無雨/著、河出書房新社
東京でのドブ浚いの仕事中の事故をきっかけに故郷へと戻ったクザーノは、砂漠のむこうの幻の町へ旅立ったー。
第57回文藝賞受賞作。
1、2、3と何度も反復して描写される世界。
少しずつ矛盾をはらみながらも、砂漠へと旅に出たクザーノがつないだ物語に違いはない。
そしてそれはクザーノ個人の物語ではなく、その祖先から受け継ぎ子孫へと連綿と続いていく物語。
はじめは戸惑いながら読んでいた反復も、その意味のようなものに気づいたとたん、とても興味深くなりました。
一人の「人生」だけでは語れない。
東京や新幹線が登場するし、名前は日本人のもの。
だけれども、その景色がどうしても現実の日本に落とし込んで想像できない。
不思議なファンタジーです。