旅をする本
無人本屋くらんなかさんで購入した本の話です。
その前に、くらんなかさんのことを少し。
くらんなかさんの本は、ほとんどが寄付で集まった本だそうです。
お店の前には「寄付本はこちらに」という箱があり、誰でもいつでも本を寄付することができます。
不要になったけど捨てるのは忍びないという本を、新たな持ち主のもとに届けることができる、とても素敵な取り組みです。
元値ゼロで集まった本なので、値付けもとても良心的。
「本屋がない町に本屋をつくりたい」という地域の人のための想いがあるからこその儲け度外視。
すべてがあたたかいです。
ある日、くらんなかさんのSNSで、その日寄付箱に入っていた本の投稿がありました。
その写真に、私が前々から探してた本が写っていたんです!
絶版の希少本で、古書店でも高値がついています。
福音館文庫版を読んで感銘を受け、大判のこの本がほしいと思っていました。
くらんなか店主さんのご厚意で、格安で譲り受けることができました。
大道あやさんは、ときがわ町の隣の越生町に住んでいたことがありますから、この地で古本として巡り会うのは、十分にあり得ることだと思います。
ところが。
そんな単純なことではなかったのです!
ページをめくってみて興味深いことがわかりました。
まず。
表の見返しを1枚めくったところ。
大道あやさんがどなたかへ献本されたのでしょう。お相手の名前もバッチリ入っていました。
そして。
裏の見返しには、なんと前橋の古書店の値札が!
その名も「山猫館書房」。
山猫のイラストが素敵です。
つまりこの本、最初に大道あやさんから某氏に贈られ、どんな経緯があったのか前橋の古書店で売られるようになり、それがときがわ町のどなたかの手に渡ったものが、くらんなかに寄付され、それをSNSで見つけた私の手元にやってきたのです!
なんて長い旅をしてきたのでしょう。
ロマンを感じませんか?
しかもそんな長旅をしたのに、とても綺麗なんです。
この本が辿った冒険も含めて、とても愛しい1冊になりました。