ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

旅をする本

無人本屋くらんなかさんで購入した本の話です。

その前に、くらんなかさんのことを少し。

くらんなかさんの本は、ほとんどが寄付で集まった本だそうです。

お店の前には「寄付本はこちらに」という箱があり、誰でもいつでも本を寄付することができます。

不要になったけど捨てるのは忍びないという本を、新たな持ち主のもとに届けることができる、とても素敵な取り組みです。

元値ゼロで集まった本なので、値付けもとても良心的。
「本屋がない町に本屋をつくりたい」という地域の人のための想いがあるからこその儲け度外視。

すべてがあたたかいです。

ある日、くらんなかさんのSNSで、その日寄付箱に入っていた本の投稿がありました。
その写真に、私が前々から探してた本が写っていたんです!

f:id:nekoodoruneko:20210419175402j:plain
『へくそ花も花盛り』大道あや/著、福音館書店

絶版の希少本で、古書店でも高値がついています。
福音館文庫版を読んで感銘を受け、大判のこの本がほしいと思っていました。

くらんなか店主さんのご厚意で、格安で譲り受けることができました。

大道あやさんは、ときがわ町の隣の越生町に住んでいたことがありますから、この地で古本として巡り会うのは、十分にあり得ることだと思います。

ところが。
そんな単純なことではなかったのです!

ページをめくってみて興味深いことがわかりました。

まず。

f:id:nekoodoruneko:20210419175912j:plain
表の見返しを1枚めくったところ。
大道あやさんがどなたかへ献本されたのでしょう。お相手の名前もバッチリ入っていました。

そして。

f:id:nekoodoruneko:20210419180155j:plain
裏の見返しには、なんと前橋の古書店の値札が!

その名も「山猫館書房」。
山猫のイラストが素敵です。

つまりこの本、最初に大道あやさんから某氏に贈られ、どんな経緯があったのか前橋の古書店で売られるようになり、それがときがわ町のどなたかの手に渡ったものが、くらんなかに寄付され、それをSNSで見つけた私の手元にやってきたのです!

なんて長い旅をしてきたのでしょう。
ロマンを感じませんか?

しかもそんな長旅をしたのに、とても綺麗なんです。

この本が辿った冒険も含めて、とても愛しい1冊になりました。