バウルの歌
自分の心に。
『バウルを探して 完全版』川内有緒/著、中川彰/写真、三輪舎
ベンガル地方で歌い継がれ、今日も誰かが口すざむバウルの歌。
なぜ数百年もの間、口頭伝承され歌い継がれているのか、その謎と本質に迫ったノンフィクション。
2013年に幻冬舎から出版されて第33回新田次郎文学賞を受賞した作品。
旅に同行した写真家、中川彰さんによるベンガルの美しいカラー写真をふんだんに収録した、まさに完全版です。
「バングラデシュはバックパッカーも行かないアジア最貧国」という導入部分から引き込まれました。
私は、バングラデシュについて何も知らない。
私がこの本を手にしたのは、三輪舎から美しい完全版が出版されたことでその存在を知ったからで、「ベンガル」も「バウル」もよくわからずに読み始めました。
それがバングラデシュのことだとわかっても、バングラデシュについての知識がまるでない。
この本は、本当に未知の世界への入り口でした。
そして、とてもとても面白かった。
時々写真のページに戻って中川さんが見た風景を眺め、また文章に戻って読みすすめる、そんなことを繰り返しているうちに、川内さんと中川さんが旅した行程を一緒に歩んでいるような感覚になりました。
バウルを探す旅の2年後に亡くなられた写真家の中川さんへの想い。
完全版のためのあとがきを読んで、あぁ、この本は本当に完成したんだなあと、胸がいっぱいになりました。
この本に出会えてよかった。
心からそう思える美しい1冊です。