罪の声
子どもの声。
『罪の声』塩田武士、講談社
自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。
それは日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。
昭和最大の未解決事件を描いた傑作長編。
映画がすばらしく、原作を読みたくて手に取りました。
登場人物が多く、複数の企業を脅迫する入り組んだ事件に株がからんだりで、映画では一度で理解するのが難しい部分があり、その解消をしたいと思いましたが、本を読んでみてもその印象は変わらず、やっぱり難しい。
時系列の整理も追いつかず、事件そのものがとにかく複雑なんだと思いました。
小説には、映画とは違う部分も多くありました。
そこからは小説のいいところと映画のいいところをそれぞれ感じました。
映画では、曽根と阿久津のふたりがたどる線がひとつに交わり一気に加速するところが印象的でしたが、小説では、それはひとつの到達点という感じで、ジワジワと核心に迫りゆく過程で「未来」へと舵を切り進んでいく様子がより鮮明に感じられるのが小説でした。
考えるヒマを与えず最後までみせるスピード感ある映画、よくぞこの原作からここまでそぎ落としつなぎ直して構成したなあと、感心してしまいました。
映画、もう一度観たい。
そしてこの小説の元となった事件をもっと知りたいと思いました。