ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

雪ふる校舎

思い出して。

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『冷たい校舎の時は止まる』辻村深月/著、講談社

ある雪の日、男女8人の高校生が学校に閉じこめられた。
開かない扉、5時53分で止った時計。
8人は2ヵ月前に自殺したクラスメートのことを思い出すが、その顔と名前がわからない。
どうして忘れてしまったんだろう―。

第31回メフィスト賞を受賞した、辻村深月のデビュー作。
とあるきっかけで読むことになり、手に取りました。

最初に登場する高校生の名前が「辻村深月」なことにまずびっくり。
処女作の登場人物の名前をペンネームにする作家さんがまれにいますが、辻村さんもそうだったのでしょうか。

かがみの孤城』を読んだ時も感じた率直な感想として、展開や伏線がわかりやすく、容易に推測ができるんですよね。
いくつかの「謎」について、私は推理したことが当たっていました。
でも、その推理の先を行く展開もちゃんとあって、さすがです。

展開がわかりやすいのはYA向きだからかなと思ったのですが、もしかしたら辻村さんの作風と私の思考回路が似ているのかもしれません。

8人ひとりひとりの内面を丁寧に描いているので、とても長いお話になっています。
「謎」の部分だけを追いたい人には、なかなか結末にたどり着かなくてヤキモキするかもしれません。

最後まで読んだら、また冒頭部分から読み返してみてください。
ああ、なるほど、と、矛盾なくしっくりとくる答え合わせ、ここまでがこの作品の楽しみ方です。

ミステリーとホラーと青春と。
かがみの孤城』が好きだった人にはおすすめの、辻村深月デビュー作です。