ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

水の番人

なぜ世界は失われたのか。

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『水の継承者ノリア』エンミ・イタランタ/著、末延弘子/訳、西村書店東京出版編集部

資源や技術が失われた世界。
水が貴重なものとなった世界で、違法に水を得た者は厳罰に処される。
人知れず残された泉を守る使命を持った「茶人」となった少女ノリアの、水と自由をめぐる物語。

スカンジナビア連合のはるか北、ニューキアン軍の占領下にある村が舞台。
地球温暖化で海面が上昇して多くの地が水没し、冬がなく、雪が降らない北の地。
現代文明が滅びた後の世界の物語です。

「茶人」というのが日本の茶道と通じるものがあって、遠い地の物語なのにどこか日本らしさを感じます。

静かに水の中を漂っているような感覚のなかで読みました。
心地良いけれど、命の危険をはらんだ緊迫感がある。
生も、死も、水の流れそのもの。

ディストピア

その世界を生きる少女の目に映るのは、希望か、絶望か。

文明の恩恵にあずかって生きる私たちの生活の先にこんな未来があるのだとしら。
空想の物語とわかっていても、考えずにはいられない。

これは警告の書。
フィンランドの作家が書いたこの物語は、フィンランドで様々な賞を受賞したそうです。
日本でも、もっと読まれてほしいYA小説です。