幻想的現実。
『海』小川洋子/著、新潮社
静かで、どこか秘密めいた妖しさをまとった短編集。
『ことり』で小川ワールドに迷い込み、ずっと積読になっていたこの『海』を手に取りました。
「鳴鱗琴」という楽器の音色、缶ドロップの優しさ、活字管理人の艶やかさ。
色とりどりのひよこに、不完全なシャツに、ガイドの旗。
どのお話もそれぞれに印象深いのは、登場する「ちょっと変わったもの」たちが魅力的だからでしょう。
短編ひとつひとつについて、読んだ人と語り合いたくなるような。
読書会にいいかもしれません。
クスッと笑ってしまうユーモアと、つかみどころのない不思議の世界観。
小川ワールドにますますはまりそうです。