浅間山のふもと
暖炉がほしくなりました。
『火山のふもとで』松家仁之/著、新潮社
1982年、およそ10年ぶりに噴火した浅間山のふもとの山荘。
夏のあいだだけ、村井設計事務所はこの軽井沢の地に拠点を移すのだ。
秋に控えた「国立現代図書館」設計コンペに向ける所員たちの静かな情熱と、先生の姪と「ぼく」とのひそやかな恋を描いた物語。
ひと夏の物語。
とてもていねいにていねいに紡がれた言葉たち。
それはそのまま、登場人物たちの生きる日々を表わしていました。
ていねいにていねいに営まれた山荘での生活。
静かで美しい軽井沢の自然の風景、鳥や草花の描写に触れるうちに、その地を訪れてみたくなりました。
音楽や料理、紅茶、車など、こまやかな筆致で描かれるすべてが、彩りとして物語に添えられています。
なにより、建築の知識ゼロの私が、建築をこんなに興味深く思うとは。
今まで考えたこともなかったような視点から建築物を見るようになりそうです。
大事に読みたくて、毎日少しずつ読み進めました。
静かで豊かな時間を大切にしたい人におすすめの長編小説です。