妖しく美しく、そして可愛らしい。
『あのねこは』石津ちひろ/文、宇野亞喜良/絵、フレーベル館
亡くした猫への想いを綴った、詩のような絵本です。
言葉を自由自在にあやつる、石津ちひろさん。
宇野亞喜良さんが描く、美しい猫と女性たち。
言葉の力、絵の力。
数ページめくっていくと、「ああ、これは大切な1冊だ」とわかります。
大切な猫を失ったことのある人に、そっと手渡したい。
猫といた時間の優しさ、愛おしさ、その愛嬌、そんなものを静かに思い出させてくれます。
そして、前に進む一歩を、そっと後押ししてくれる。
どこまでも優しく、愛おしく。
強引に悲しみの中へ引きずりこむような乱暴はしない。
そんな、静かで、上質な絵本です。