美しいミステリー
すごく怖がりな子どもで、ミステリー小説は「人が死ぬ」のが怖くて読めませんでした。
小学校高学年の頃、猫好きな私は三毛猫ホームズを読もうとして、結構な出だしから人が死んだので、もうそれ以上読めませんでした。「猫の本で人が死ぬなんて!」と、ひとり勝手にショックを受けたのを覚えています。
ミステリーが読めるようになったのは、中学3年生くらいでしょうか。高校生になってアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を読了した時は、「これでミステリー恐怖症は克服した!」と高々に宣言したものでした(心のなかで)。
これは、そんな「ミステリー読めない症候群」だった私が好きになったミステリー作品。
単行本は理論社から出版されていて、図書館では児童書扱いでしたが、この作品の良さは子どもにはわからないんじゃないかな、と、思いました。
戦時中のミッションスクールが舞台の、1冊の美しいノートをめぐる少女たちの物語。耽美、という言葉が一番しっくりくる、美しいミステリーです。
でも、甘くない。
極上のミステリーを読んだ時にだけ感じることができる、なんとも言えない薄ら寒い感じを、しっかりと感じましたよ。