宝石のような物語
今年2月に亡くなられた石牟礼道子さん。
水俣病問題を社会に訴えた小説『苦海浄土』はよく知られていますが、子どものために書かれた作品もあります。
最初に私が読んだのは平凡社から出版されたもので、児童書である福音館書店版と違い、挿し絵はなく、ルビもほとんどふられていなくて、大人向けの顔をした本でした。
ただただ、美しい本だと思いました。
言葉の美しさ、描写された世界の美しさ、登場する者たちの美しさ、物語の美しさ…
すべてが、ただただ美しい。
ルビがなくて正しい読みがわからない言葉もなかにはあって、でもそれをなんとなく想像のなかで音にしながら読み進めました。
その過程も、漢字が読めないけど前後の文脈から意味を推測しながら読んでいた子どもの頃に戻ったようで、なんだか懐かしい感じを思い出しました。
人と自然とすべての生き物が、みな平等に生きていた頃の、美しいファンタジーです。
子どもにも、読まずに大人になってしまった大人にも、すべての人に読んでほしい物語です。