ネコオドルのほんのつぶやき

自然豊かな小さな町で、猫4匹と暮らしています。小さな本屋「ネコオドル」店主が、本のこと猫のことなどをつぶやきます。

とりとねことうた

ぼくのために歌ってよ。


『 うたえなくなったとりとうたをたべたねこ』たなかしん/絵・文、竹澤汀/歌、求龍堂

窓辺の鳥に恋をした黒猫と、歌えなくなった鳥の、切ないラブストーリー。

鳥が歌えなくなったことには理由があって。
だんだんと鳥に近づいていく黒猫には、それがちゃんとわかっていて。

鳥に恋をした黒猫の愛情表現はどれもとても素敵で。

キュンとして、ハッとして、せつなくなる。

とても不思議な物語です。

心が静かに穏やかになる、大人のための猫絵本です。

QRコードがついていて、歌と朗読が聴けますよ。

だから本をつくる。

大切な人に届けるために。


『あしたから出版社』島田潤一郎/著、晶文社

設立から5年目に綴られた「夏葉社」誕生までの日々、そしてそれからの歩み。

1冊1冊こだわりぬいて作られた本に、ファンも多い夏葉社。

いつかネコオドルで夏葉社さんの本を扱いたいな、とずっと漠然と考えていました。
そんななか出会った『第一藝文社をさがして』という本に後押しされて、夏葉社さんに連絡をとり、お取り扱いさせていただくことになったのですが、漠然としか知らなかった夏葉社さんについてもっと知りたいという気持ちからこの本を手に取りました。

とても失礼なことかもしれないけど、勝手に抱いていたイメージとは、まったく違いました。

夏葉社という社名も、作っている本も、なんなら島田さんの潤一郎という名前からも、「スマートなヤツ」という印象しかなくて、シュッとした感じでパパッとひとりで出版社はじめちゃった人なのかと勝手に思っていました、すみません。

でも全然違っていました。
すべては喪失からはじまっていたこと、挫折や失敗やつらい体験のあとに今があることが、飾らない文章からまっすぐに伝わってきました。

目の前のひとりのために本をつくり、届ける。
この人が作る本だから信頼できるんだ、と、腑に落ちた感じ。

この本をもっと早く読んでいたら、きっともっと早く連絡していたのに。
シュッとした人、という勝手なイメージで先送りしていたことを後悔します。
そういえば、メールを送っても一向に返信がなかったので、届かなかったのかもと不安に思いSNSのDMを送ったら「すみません、メール確認してたのに、返信するの忘れてました!」というメッセージが返ってきたことは、この本を書いた島田さん、この本に語られた島田さんのイメージにぴったりだったな、と、今になってフフっと笑ってしまう出来事でした。

大切にしたいものが何かがはっきりと見えている人は、強い。

10年目に書かれた『古くてあたらしい仕事』(新潮社)も、もう少し俯瞰的な視点から自身の思いをまっすぐに語っていて、あわせて読むのをおすすめします。

うちのこ

久しぶりにうちのこのこと。


白ちゃ猫ことベル、1歳半です。

4月始め頃、ちょっと大変だったのです。

急に体調を崩し、何も食べなくなり…
動物病院で処方された薬を飲んでも一向によくならず、悪化しているようにしか見えない、悪夢のような日々。

1週間くらい何も食べようとせず、ほとんど動かず、最悪の事態を覚悟しました。

幸いにも、その後の病院での処置のおかげもあり回復に向かいましたが、まだ1歳半なのにつらい思いをさせてしまった、健康管理もちゃんとしてあげられなかったと、自分を責めました。

2週間以上が過ぎ、今はよく食べ、前ほどではないけどだいぶ動きまわるようになりました。
少し痩せたけど、元々ぽっちゃり体型だったので、今は普通体型です。
洒落にならないダイエットでした。

野良猫の子で、保護したときもひどい猫風邪をひいていたベル。
ちょっとしたことですぐに体調をくずす、かよわい子なのです。

やんちゃに元気に、どうか長生きしてね。

四字猫語

猫と学ぶ教養。


『ニャン故知新 猫のための四字猫語』 山内ジョージ/絵、愛育社

猫たちが体をはって四字熟語をおしえます。

人文字ならぬ、猫文字。

猫たちが表情豊かに四字熟語の世界を表現していて、絵を見るだけでなんとなく意味が伝わってくるのがすごい。

猫の次に多く登場するのはたぶんネズミ。
猫に追いかけられたり、噛みついたり、仲良くなったり。
猫の世界には欠かせない存在なのですね。

眺めているだけで笑えてしまう楽しい本です。

本屋ときがわ町

4月17日、第37回「本屋ときがわ町」に出店しました。
埼玉県ときがわ町のiofficeにて行われる、ときがわカンパニーさん主催のブックイベントです。

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ネコオドルは2年半ぶりの出店。
だいぶご無沙汰していましたが、あたたかく迎えていただき、すぐに馴染んでしまいました。

出店場所は屋内と屋外の2か所。

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屋外はなんとテント!
素敵な演出にワクワクします。

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屋外は古本を並べました。
あまり数がないので、見ばえする本を面だしして。

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屋内には新刊をならべました。
「仕事と暮らし」「手仕事」をテーマに選書し、そこに猫の本や雑貨を盛りこみました。

準備したり、他の出店者さんのスペースを見たりしていたらいつの間にか開始時間を30分も過ぎていて、あわててSNSに「はじまったよー」と投稿。
ぬるっとスタートしてたんですね。

写真を取り忘れたのですがネコオドルの他には4名の個性豊かな出店者さんが参加されてました。
午後には不思議な本を作るワークショップもあり、こちらは子ども達に大人気で賑わっていました。

出店者さんもお客さまも、久しぶりの方にたくさんお会いできて、思いがけない再会もあり、嬉しさと驚きとで終始気分が高まってました。

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途中で雨に降られる時間帯もありましたが、テントのおかげて慌てずに対処できて、なんてありがたい。
イベント性と実用性を兼ね揃えた素敵アイテムですね。

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とにかく楽しく、あっという間でした。
また参加したいと思います!

千年の読書

通りすぎていった本たち。

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『千年の読書 人生を変える本との出会い』三砂慶明/著、誠文堂新光社

人生を変える本と出会えるのは偶然なのか。
本に人生を何度も助けられてきたという書店員が綴る読書エッセイ。

冒頭で、俳優を目指していた著者の友人の話が出てきます。
サン・テグジュペリの『夜間飛行』を読み、パイロットになることを決意した男。

実は私の知っている人なんです。

私が舞台衣裳の仕事をしていた頃、衣装を担当した劇団の劇団員でした。
出会った頃はまだ俳優で、何度か一緒に舞台を創り、しばらくしてパイロットになる夢をかなえるべく彼は劇団を離れていったのでした。

この『夜間飛行』の話も、その当時に聞いていた気がします。
本人から聞いたのか、まわりの仲間から聞いたのか、はっきりとは覚えていないのですが、本との出会いで人生を決めた彼のことを「こいつすごいんだよ!」と、仲間たちが誇らしげにしていたことはよく覚えています。

私の人生を変えた本はなんだろう。
もう出会っているのだろうか。

本の内容より、本の存在によって、人生が動いている気がする。
私にとって読書は、そういうものかもしれない。

森で過ごす

自然の恩恵、いいとこどりで。

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『週末、森で』益田ミリ/著、幻冬舎

ふと思いついて、田舎暮らしをはじめた早川さん。
東京で働き、時々早川さんに会いに来る友人のマユミちゃんとせっちゃん。
森を歩き、湖で遊ぶ、3人のスローな週末時間。

ラフな絵柄でやわらいでるけど、益田さんて実はけっこう辛口だと思うんです。
そう気づいていっそう好きになった作家さん。
漫画じゃないエッセイを読むと、辛口具合がよくわかりますよ。
甘いことばかり言われても…って思っちゃう私みたいな人、たくさんいそうです。

このコミックも、「田舎暮らし=スローライフナチュラル志向」という思い込みや、田舎で暮らすならこうしなければ的な世間の期待という名の押しつけを、一蹴してくれてます。
畑を耕したり、古民家をDIYでリフォームしたりする生活に「のんびり暮らしたいはずなのにがんばっちゃってない?」って感じることは間違いじゃないんですよ。

田舎でも東京でもどこでも、好きなように暮らすのがいちばん。
田舎のいいところと、便利な社会のいいところ、いいとこ取りで暮らしたい。

週末だけ田舎ライフを満喫しにやってくる友達の、自然とのつきあい方もいい。
だれもが田舎暮らしができるわけじゃないし、仕事を辞めたり引っ越したりできるわけじゃない。
日々のストレスやイライラがなくなるわけじゃないかもしれないけど、デトックスできる場所があるってことが素敵だなあと思うのです。

益田ミリさんのコミックのなかで一番好きな作品です。